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DXは、経営者、業務部門、IT部門の“三位一体”で推進せよ【DIGITAL X Forum 2019】

経産省『DXレポート』が問う「2025年の崖」の真意と、その乗り越え方

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2019年4月3日

デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが不可避ななか、経済産業省は2018年9月、『DXレポート』を発表し、既存システムの複雑化・ブラックボックス化を解消しなければ、2025年以降に最大12兆円の経済損失が生じると警鐘を鳴らした。これが「2025年の崖」だ。同レポートの真意について、同レポートをまとめた「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の座長の青山 幹雄 氏(南山大学理工学部ソフトウェア工学科 教授)が、東京・品川で2019年3月13日に開かれた「DIGITAL X Forum 2019」(主催:インプレス)の基調講演で語った。

 「老朽化による保守・運用コストが増大し、レガシーシステムの“負債”が拡大する。これから2025年の間に、市場シェアが高い基本ソフトウェアやERP(統合基幹業務システム)のサポートが終了するからだ」−−。

 経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の座長を務めた南山大学理工学部ソフトウェア工学科 教授の青山 幹雄 氏は、こう警鐘を鳴らす(写真1)。

写真1:「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の座長を務めた南山大学理工学部ソフトウェア工学科の青山 幹雄 教授

 加えて「IT人材も保守業務に回されているため、デジタルトランスフォーメーション(DX)のための人材が不足する」(青山氏)ともいう。結果、企業が技術革新やDXに取り組むことが難しくなる。これが、経産省が『DXレポート』で指摘した「2025年の崖」だ(図1)。

図1:ITの技術負債が「2025年の崖」を生み出す(青山教授のプレゼン資料より)

世界ではDXが確実に進展している

 だがDXは本当に取り組まざるを得ないテーマなのか。この問について青山氏は、IT産業の成長率の海外と日本の開きを挙げる。2015年から2020年におけるIT産業の成長率は、世界が5.0%なのに対し日本は1.1%に留まる。この差を生んでいるのが、企業のDXへの取り組み度合いの違いであり、世界では「ビジネスやUX(顧客体験)の改善、データの活用が進行している」(同)とする。

 具体例として挙げるのが米Uber Technologiesの配車サービス「Uber」。青阿山氏は、「乗客とドライバーの困りゴトは同じだ。客はタクシーを探し、タクシーは客を探している。Uberはそれら両方の悩みを解決した。これは、問題解決における新しいタイプのシステムだった」と指摘する。

 新タイプとは、「リアルタイムにマッチメーク(仲介)することで社会問題を合理的に解決する仕組み」(青山氏)を指す。ネットビジネスの米Amazon.comや楽天、マーケットプレイスやオークションの米ebayやメルカリ、中国のアリババなども同様の仕組みを構築している。青山氏は、これらの仕組みを「デジタルビジネスを創出するマルチサイドデジタルプラットフォーム」と呼ぶ。

 「カギはコネクティビティにある。人と人、人とシステムを結びつける。従来の単一企業が良いモノを作って売るという発想ではない。彼らは、違う基準・違う土俵でビジネスをしている。そこにデジタルディスラプション(破壊)や競争力の逆転が発生している。
 コスト削減から価値の向上へ。定型業務の支援からデータを活用する新ビジネスの創出へ。そして人の活動の支援。これらを実現するために、デジタル、クラウド、エコシステム、ネットワークを活用し競争力を維持していくかが課題になっている」