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コネクティッドカーへのLTEによる一斉同報配信、KDDIやノキアらが世界初で成功

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年4月18日
実証実験のためのコネクテッドカーに搭載された機器群

自動運転車を含む通信機能を備えた車である”コネクティッドカー”を対象に、携帯電話のLTEを使った一斉同報配信の実証実験に行われ成功した。LTEによるコネクテッドカーへの一斉同報配信の成功は、世界でこれが初めてという。KDDIとノキアソリューションズ&ネットワークス、スウェーデンのHexagon、KDDI総合研究所の4社が実施した。2018年4月16日に発表した。

 コネクテッドカーへの一斉同報配信は、自動運転車が走行状態を常に監視し、道路上にある構造物からの情報や、人や障害物などの存在などをリアルタイムに運転にフィードバックする仕組みの実現に欠かせない。また併走する車両からの落下物や異常気象などの発生を受け取るなどにも不可欠である。これまでは、1対1で通信する「個別配信」が主流で、対象車が増えると多くの電波帯域が必要になる。一斉同報配信では、一つの電波帯域で1対Nの配信ができるため電波の利用効率が高くなる。

 検証したのは「eMBMS (LTE Evolved Multimedia Broadcast Multicast Service) 」と呼ぶ技術。エリア内で受信を希望する全端末に向けて、同一データを、同じ周波数帯域で送信する。実証実験は、北海道豊頃町の公道で2018年4月2日から20日にかけて実施した。走行するコネクティッドカーへの配信成功率やエンドツーエンドでの遅延を検証。位置を測位する際の補強情報を配信し、個別配信と一斉同報配信による測位結果の違いなども比較した。

 具体的には、先行車が検知した道路障害物などの情報を後方車両に一斉同報し、後続車が衝突回避操作を取れるかを検証(図1)。またコネクティッドカーが正確に自車の位置を把握することを目的に、基地局の位置を車の「おおよその位置」とみなして配信センターに送信し、基地局周辺の車に補強情報を一斉同報で配信した。

図1:前方の障害物の存在を一斉同報配信で伝える実験の概念と実験の様子

 今回の実証実験における参加各社の役割は、次の通り。KDDIは、実験のためのユースケースの定義と、基地局附帯設備を含む一斉同報配信のネットワークを提供。KDDI総合研究所もユースケース定義に関わったほか、実験データの解析などに協力した。

 ノキアは、基地局装置と、データを利用者に近いネットワーク内で処理するエッジコンピューティングの技術「MEC」を提供し、かつ全体をインテグレーションした(写真1)。Hexagonは、同社が提供する高精度位置測位の補正信号を配信するためのアプリケーションを開発し、日本向けにカスタマイズした。

写真1:実証実験フィールドに設置された基地局