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成否の分かれ道にある生成AIプロジェクト、ガートナーの失敗要因からみる成功への道筋
「生成AI(人工知能)プロジェクトの50%以上がPoC(Proof of Concept:概念実証)段階で失敗している」--。こんな予測をガートナーが2026年1月下旬に発表し話題を呼んだ。だが逆に見れば、残りの50%弱は「PoCの壁を突破し、ビジネス価値を享受し始めている」ということになる。生成AIプロジェクトは今“コストの山”になるのかどうかの分かれ道にある。
米MIT(マサチューセッツ工科大学)が2025年8月に公表した『The GenAI Divide: State of AI in Business 2025』は、生成AI(人工知能)プロジェクトの成功率は「わずか5%」と報告していた。それが、ガートナーが2026年1月下旬に発表した予測では「PoC(Proof of Concept:概念実証)の壁を突破し、ビジネス価値を享受し始めている」割合が50%弱にまで高まった。
わずか半年で、投資対効果など成果を得られるようになった理由は、どこにあるのか。MITは失敗の主な理由として、AIモデル自体の性能や欠陥ではなく「明確な目的がない導入」などを挙げていた。ガートナーも失敗要因としては、同じく「ビジネス価値の欠如」を挙げるほか「データの準備不足」や「TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)のコントロール」責任あるAIの回避」などとする(表1)。
| 失敗要因 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| ビジネス価値の欠如 | 最も根本的な失敗パターン。組織が派手なデモを追い求めたり、生成AIをあらゆる場所に同時に展開したりすると、効果の低い取り組みにリソースが分散してしまう。明確な優先順位付けや成功指標がなければ、プロジェクトは測定可能なビジネス価値を生み出さない | 組織のAIに対する野心と技術的な実現可能な現状に沿った厳密な AIユースケースの優先順位付けフレームワークを作成する。生産性の向上、コスト削減、顧客満足度の向上など、具体的で測定可能なビジネス成果を特定し、継続的に追跡する |
| データの準備不足 | データ品質の低さは、生成AIを活用しようとする全ての部門に影響を与える。信頼性の低い出力、検索拡張生成(RAG)の実装の失敗、効果的な微調整ができないモデルなどが生じる | 生成AIイニシアチブを拡大しながら、 AI対応のデータ基盤を構築する。厳選した正確なデータを適切に管理する |
| 総所有コストの上昇 | コスト上昇は、技術的に成功しユーザーに価値を提供しているプロジェクトであっても、頓挫させてしまう。PoC(概念実証)段階では実現可能に見えたプロジェクトも、本番環境では予算の大幅な上昇になり突然の中止になる | 生成AIのFinOps(財務オペレーション)の実践を初日から導入する 。IT部門だけでなく、全ての関係者に対し、導入方法、モデル選択、トークン使用に伴うコストへの影響について教育する。不要な場合は、高額なモデルカスタマイズを避ける |
| 責任あるAIの後回し | 規制違反、ブランドイメージの低下、ユーザーへの被害、プロジェクトの中止といった事態に陥るリスクが高まる。生成AIは既存のAIリスクを拡大させるだけでなく、ディープフェイクやハルシネーションといった新たなリスクも生み出す | (1)安全性:有害な出力を防止しモデルの信頼性を確保する、(2)プライバシー:機密データの保護、(3)説明責任: 明確なガバナンスと所有権の確立、(4)公平性:偏見や有害な言動を避け公平な結果を確保するの4つの柱に基づいて生成AIを活用する |
| 不十分な変更管理 | 技術的に優れた生成AIツールであっても、ほとんど活用されなくなる。利用率は時間とともに低下し、従業員は権限を与えられるどころか脅威を感じるようになる | 変更管理を最優先事項にする。生成AIが従業員の仕事、アイデンティティ、ワークライフバランスにどのような影響を与えるかを理解する。雇用の安定性を脅かすのではなく、人間の能力を増幅させることに重点を置く |
ガートナーのバイスプレジデント アナリストである桂島 航 氏は「『遅れてはいけない』との焦りから、具体的な目標がないまま全従業員にAIアシスタントを配布する企業や、影響度の低いプロジェクトにリソースを振り向けるなど優先順位をつけない企業などがあった」と指摘する。
逆に言えば、成功要因は「目標を明確にし、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を持ち、PoCの段階から継続的に管理していること」になる。ガートナーは失敗要因への対策を提案している。桂島氏の回答を含め整理すると、具体策は次のようになる。