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- 情報セキュリティ審査基準「TISAX」に対応するための3条件
条件1:TISAXの概要を知る
独自動車業界がサプライチェーンに求めるセキュリティ
TISAX審査は5つの構成者からなる
TISAXの審査に適合するためには、TISAXの要求事項に沿った情報セキュリティの管理態勢を構築・運用することはもとより、情報セキュリティの専門知識やTISAXの審査ノウハウに加え、語学力が必要になる。審査は英語またはドイツ語で実施されるからだ。これらへの対応は、多くの日本企業にとっては負担になる。こうした負担を少しでも軽減するためにはまず、TISAXの概要を把握することが重要だ。
TISAXは、VDAにおけるサプライヤーに対する情報セキュリティ審査の方法・基準を共通化し、審査結果を共有するための仕組みである。
TISAXの構成者は、(1)VDA、(2)European Network Exchange協会(ENX協会)、(3)パッシブ参加者=情報の連携元であり審査の要求元、(4)アクティブ参加者=情報の連携先であり審査を受ける主体、(5)審査機関の5者からなる。これら5者の役割および関係性を図2に示す。
VDAは、TISAXを設計・設立した主体である。だが、その運用はENX協会に委託されており、VDAがTISAX審査のプロセスに直接的に関わってくることはない。TISAX審査の結果も、ENX協会が運営する共有ポータルサイト「ENXポータル」に登録され、他社との共有が可能になる。
セキュリティの評価プロセスに関わる自動車メーカーあるいはサプライヤーは、TISAXでは「参加者」と呼ぶ。TISAX審査の要求元がパッシブ参加者、TISAX審査を要求された側がアクティブ参加者である。
パッシブ参加者になり得るのは必ずしも自動車メーカーであるとは限らない点に留意が必要だ。ドイツの自動車メーカーと直接取引がなくても、ドイツの1次サプライヤーが日本の2次サプライヤーに対しTISAX審査を要求するケースがあるからだ。
TISAX審査の実務を担うのが、ENX協会から認定を受けた審査機関である。2019年8月5日時点で、ENX協会から認定を受けている審査機関は全世界に9機関ある。
これら5者によるTISAX審査の流れを簡単に説明すると次のようになる。
(1)パッシブ参加者がアクティブ参加者へ審査を要求する
(2)要求を受けたアクティブ参加者はENXポータル上で審査登録するとともに、審査機関に審査を依頼する
(3)審査機関が審査する
(4)審査機関は、審査結果を報告書にまとめ、ENXポータルに登録する
(5)ENXポータルを介して、アクティブ参加者とパッシブ参加者は結果を共有する
次回は、TISAX審査全体の具体的なプロセスについて解説する。
有馬 典孝(ありま・みちたか)
KPMGコンサルティング マネジャー。情報セキュリティ専業ベンダーでネットワーク、情報セキュリティ機器およびSOCの運用に従事。KPMGコンサルティングでは、情報セキュリティ態勢評価、CSIRT高度化、個人情報など機密データ保護といった領域においてコンサルティングサービスを提供している。