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  • 問われるサイバーレジリエンス

サイバー攻撃の脅威が増す中では実戦形式のトレーニングと実態調査が不可欠に

「重要インフラ&産業サイバーセキュリティコンファレンス」より、サイバージムジャパン代表取締役社長の松田 孝裕 氏

伊藤 真美
2024年4月4日

 経営者向けのトレーニングもある。デューデリジェンス(適正評価手続き)やコンプライアンス(法令順守)などを中心に講義を実施し、サイバーセキュリティの最新動向や、利害者関係との調整スキル、役員個人の注意義務も含めて解説する。サイバー攻撃を受けて身代金を請求された際のシミュレーショントレーニングも実施する。

 松田氏は、「実戦形式でのサイバーセキュリティトレーニングは、すべての層に必要だ」とし、基礎知識から中級編まで106編のeラーニングコンテンツも用意する。「近年はIT部門とOT部門のスタッフが一緒に来るケースも多い。IoT(モノのインターネット)関連部門の利用も増えている」と話す(図2)。

図2:実戦形式のサイバーセキュリティトレーニングは、すべての層に必要という

ホワイトハッカーが実際に侵入するセキュリティ診断も実施

 トレーニングだけでなく、コンサルティングやサイバー攻撃を受けた企業の復旧対応にも当たる。例えば、従業員数が300人ほどの中堅IT企業がランサムウェア「LockBit」によって会計システムを暗号化され身代金を請求された件では、「現在も、その復旧作業が続いている」と松田氏は明かす。

 工場や事業所に向けては「セキュリティリスク分析」を用意する。サイバージムによるヒアリングや調査を元にセキュリティリスクを分析し、必要な施策をコンサルティングする。「自動運転などが増えるなかで、OTセキュリティの重要度が高まっている。調査からリスクを把握し、施策に取り組むことが重要だ」と松田氏は強調する。

 各業界・業種に対し多くのサイバーセキュリティのためのガイドラインが用意されている。だが、「中堅・中小企業ではセキュリティ人材の確保が困難なケースも多く、自社に置き換えて考えるのは難しいことから、そこを補えるようサイバージムのコンサルティングでサポートしている」(松田氏)という。

 セキュリティ診断では、機械学習やAI(人工知能)技術を使った「ペネトレーションテスト(侵入テスト)」と、サイバージムが実際に企業システムに侵入し脆弱性を報告する「脅威ベースのペネトレーションテスト」も提供する(図3)。「ペネトレーションテストを定期的に実施することで、弱点を知り、適切な防御策を考えられる」と松田氏は強調する。

図3:機械学習・AIによるペネトレーションテスト(右)と、脅威ベースのペネトレーションテストを用意する

 ある製造業で実施した脅威ベースのペネトレーションテストでは、サイバージムのホワイトハッカーがネットワーク内のファイルを2週間で抽出、さらにネットワークカメラを乗っ取った。「悪意あるハッカーが同じ手段で攻撃すれば、製造ラインなどが停止し、脅迫を受ける可能性もあった」(松田氏)ということだ。

 松田氏は、「サイバー攻撃を受けると、費用がかかるのはもちろん、事業も停止し、社員も疲弊する。決して起きてはならないことだが、起きた場合にはどうするかをシミュレーションしておくだけでも対策・対処法が分かる。普段からセキュリティの意識を持てば、サイバー攻撃の大きな要因である“人”からの侵入リスクを抑えられる。BCP(事業継続計画)の取り組みの1つとして、実戦形式でのトレーニングと現場調査は非常に重要だ」と強く訴求する。

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