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大手金融機関が選んだ世界のFinTechスタートアップ10社とは、アクセンチュアの育成プログラム

DIGITAL X 編集部
2017年12月13日

金融分野のデジタル変革を目指すFinTech分野では多数のスタートアップ企業がしのぎを削っている。そうした中で。世界の大手金融機関が選んだスタートアップ企業が集まる場がある。コンサルティング会社のアクセンチュアが実施するスタートアップ企業育成プログラム「FinTech Innovation Lab Asia-Pacific(アジア・パシフィック先進金融テクノロジーラボ)」がそれ。同ラボに招待されたスタートアップ企業10社とは、どんな会社なのだろうか。

 アクセンチュアの「FinTech Innovation Lab Asia-Pacific」は、2014年6月に始まり今回が4回目の開催。事業開発に関するアドバイスや、大手金融機関やベンチャーキャピタルの上級役員とのコンタクトなど、事業拡大につながるチャンスがスタートアップ企業に提供される(図1)。

図1:FinTech Innovation Lab Asia-Pacificの参加者が講義を受ける様子

 同ラボに参加できるのは、このプログラムに協力する金融機関のIT担当上級役員が選出する。具体的には、米Bank of America Merrill Lynch、豪Commonwealth Bank of Australia、スイスCredit Suisse、米Goldman Sachs、香港Hongkong and Shanghai Banking(HSBC)、米J.P. Morgan、豪Macquarie Group、米Morgan Stanley、仏Société Générale、カナダSun Life Financial、および日本の野村グループである。

 準パートナー企業として、カナダManulife、マレーシアMaybank、米Point72 Ventures、タイSiam Commercial Bank、中国の中信銀行国際と中国建設銀行、そして日本の三井住友フィナンシャルグループが参加する。

 第4回のプログラムに書体されたのは。韓国Blocko、香港CoverGo、米FutureFlow、米KapitalWise、シンガポールmicroUmbrella.com、香港Red Pulse Technologies、イスラエルSherlock Garden、米Starling、シンガポールStash、オーストラリアTymbalsの10社である。以下、各社のサービスを紹介する。

Blocko:ブロックチェーンの技術を活用したデジタル認証、デジタル署名、スマートコントラクトのサービスを提供する。世界各国の大手金融機関と連携し、大手金融機関が抱いている技術的な要望に、自社のブロックチェーン技術で応えることを目指す。

CoverGo:各社の保険商品のデータを集め分析し、補償内容の違いを分かりやすく示す技術を開発・提供する。保険アドバイザーと保険加入者の連携を容易にするとともに、保険に関する各種手続きを自動化するサービスの提供を目指す。

FutureFlow:金融機関の顧客の秘密情報を保護しながら、金融機関や規制当局がデータを利用できるようにする技術を開発・提供する。インターネットを悪用した金融犯罪の防止や、経済政策の立案などに役立つという。

KapitalWise:少額投資を低い運用コストで容易に処理できるシステムを提供する。金融機関は個人顧客に対し、機械学習と予測分析に基づいた投資アドバイスなどを提供できる。小口で件数が多い個人顧客への投資商品業務の一部を自動化することで、同業務にかかる人員やコストを削減する。金融機関にすれば、最小の効率で個人顧客に向けた投資商品の販売量を増やせることになる。

microUmbrella.com:ごく小規模な保険商品の販売から管理、請求までを管理するシステムを開発する。同社が提供するスマートフォンアプリにより、顧客は小規模な保険商品を購入でき、保険金も簡単に請求できる。

Red Pulse Technologies:中国の経済状況や証券市場の値動きを機械学習と自然言語処理で分析し、情報を提供するシステムを開発する。経済状況などの情報の収集にかかる労力を節約する。同システムに仮想通貨を組み込み、分析結果を解説するレポートを流通させる市場を構築している。この市場には第3者が参加でき、レポート販売への対価を仮想通貨で受け取れる。

Sherlock Garden:金融関連企業に向けて、法令順守、倫理、機密保持など、企業が定めた規則の違反をAI(人工知能)で自動的に検出するソフトウェアを提供する。コンピューターシステムをスキャンし、ソフトウェアが抱えるリスクだけでなく、倫理上やビジネスでの行動規範上、問題となる可能性がある文字情報を自動で検知する。

Starling:「Regulation(規制)」と「Technology(技術)」を合わせたRegTech技術を開発する。各国政府が金融機関に課す規制や、顧客が求めるコンプライアンスに対応するための業務を部分的に自動化する。機械学習や、組織のネットワーク分析に加えて、応用行動科学の知見を取り入れることで、問題につながる可能性がある部分を検出する。企業は問題発生前に対策を打てるようになる。

Stash:患者、医療機関、保険会社に対し、共通の医療費管理請求基盤を提供する。請求データを分析することで、医療機関や保険会社は、医療費請求処理時のミスや不正、あるいは管理体制を原因とする不正を排除でき、管理コストを削減できる。

Tymbals:企業の経営判断を支援する材料を提供するネットワークを構築している。人手による処理でコストと時間がかかっている業務に対し、どこまでシステムに置き換えられるかを判断できるようにする。

 今回のプログラムでアクセンチュアは、参加10社に対し、12週間の集中教育と、製品・事業開発に関するアドバイスを提供、大手金融機関やテクノロジー企業、ベンチャーキャピタルの上級役員と接する機会も設けた。プログラム最終日には参加10社が、パートナー企業など数十社の経営層を相手に自社の製品/サービスをアピールする機会も用意した。