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事業会社と共同開発した各種スマートサービス、富士通九州システムズが投入へ
富士通系SE会社の富士通九州システムズ(FJQS)は、各種の事業会社と共同開発した各種のスマートサービスをSaaS(Software as a Service)として提供する。事業者と一般消費者を結び付けたり、各種のセンシング技術を活用したりしている。海外に展開するサービスもある。
富士通九州システムズ(FJQS)が近くリリースする予定のSaaSの1つが、ホテルの料金設定を最適化するサービス。ある不動産会社が開発した仕組みだ。ホテルの近隣で大きな催しがあれば料金を上げ、逆に閑散期には下げるなど、料金を状況に合わせて柔軟に変える。不動産会社が実際に運用したところ、ホテルの収入が2割程度アップしたという実績がある。
もう1つのSaaSが「もったいないソリューション」。九州の、あるスーパーと共同開発した。食品の廃棄ロスを販売コストをかけずに売り上げにつなげるためのサービスである。店頭で賞味期限が迫った商品のバーコードを読み取り、消費者が持つスマートフォンに「安い商品が、この店にある」といった情報を提供する。
高所作業者などの安全を守るための「スマート安全帯ソリューション」は、電気工事用機材や工具を製造販売する藤井電工と共同開発しているもの。藤井電工がBluetooth Low Energy(BLE)モジュールを備えた安全帯を開発、FJQSがデータの収集・管理などの仕組みを担当する。作業者の安全帯に取り付けたセンサーのデータをクラウドで収集し、危険な状態になれば作業者に知らせる。遠隔地から作業状態を管理することもできる(図1)。
海外で投入するのは、ある商品会社のベトナム法人が2017年7月の稼働させた「Dispatch Planning System(配車支援システム)」。ミャンマーやインドネシアなどのる東南アジアに展開する。地図情報などを使って最適な配送ルートを立案する仕組みである。
社員によるアイデアを実現するための共創スペース「Qube」も開設
FJQSがSaaSの開発に注力するのは、ビジネスモデルをこれまでのSI(System Integration)中心からサービス中心へと構造改革を図りたいから。そのために松井 和男 社長は必要な資金として2億円を確保し、社からのアイデアを募り、アイデアソンやコンテンストなどを開催する。
その一環として、2017年5月には本社ビル1階に、社員が共創を実践する場となる「Qube(キューブ)」を開設している。3Dプリンターやレザーカッターなどを設置したデジタル工房で、2017年8月に発表した「Internet of toilet」でも、人感センサーなどを用いた試作品を作ったりした。
Internet of toiletも、日本トレイ研究所と共同開発したもので、トイレの空き状況を表示する仕組みだ。FJQSの本社には2016年5月に導入したほか、富士通の新川崎ビルでも2017年7月から実証実験を行ってきた。社員のスマホにトレイの空き状況を示すほか、入室時間が15分を経過したらアラームを鳴らす。実証実験では、実際にトレイで倒れていた社員を発見できたという。
新サービスの創出にあたって松井社長は、社員に未来社会を予測データや情報に対する理解を求めた。たとえば、「2050年に日本の人口は1億人を切り、高齢者が4割に達する」や「自律型ロボットが普及している」など生活や技術について公表されている予測データは多数ある。そうした変化に応えるサービスを創り出したいからだ。
FJQSが構造変革を急ぐのは、社員数が減少しても持続的な成長を可能にするため。毎年40人程度の社員を採用しているものの、定年退職者の増加などにより今の1500人弱が2025年には約1200人に減り、平均年齢は43歳から47歳に上がるとみている。従来型のSIビジネスに依存したままだと社員減は売り上げ減になる。
そこで将来の成長市場と期待するのがサービスである。手始めにSaaSの種類は16年度の10から17年度は16に増やす。SaaSの売上高は現状10数億円だが、営業利益は3億円弱と利益率は高い。年率20〜30%で成長するSaaSなどのメニューを増やすことで。SIとサービスの比率(粗利ベース)を、今の64対36を2020年度に50対50にする。
FJQSは2017年度、売上高約450億円、営業利益約46億円を見込んでいる。売り上げの約半分がSIで、富士通からの請負に加えて、独自に数百の顧客を持つ。SIビジネス自体は今後、生産性の向上や案件の選別などによって収益率を高めたい考えだ。