- News
- 金融・保険
FinTechへの2017年の投資額は過去最奥の3兆円超え、米Accentureが分析
2017年に世界中の企業がFinTechに投資した額は274億ドル(3兆140億円:1ドル=110円で換算。以下同様)で過去最高を記録した。日本では米Accentureの日本法人が2018年5月29日に発表した。
今回の調査は、ベンチャー企業の財務データを分析業しているう調査会社米CB Insightsが提供するデータにAccentureが分析を加えたもの。それによれば、2017年のFinTechへの投資額は274億ドル(3兆140億円:1ドル=110円で換算。以下同様)で、前年比18%増だった。
投資案件数でみれば、2016年の約1800件から2017年は約2700件と1.5倍に急増した。特に多くの資金を集めたのは、保険・銀行・証券業界のスタートアップ企業だという。
FinTechへの投資額は2010年から増加の一途をたどり、累計で977億ドル(10兆7470億円)に達する。うち54%が米国のスタートアップ企業を対象にしたものだ。この期間の投資額の年複利成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は47%に達し、案件数のCAGRは35%にもなる。
国別に見ると米国、英国、インドの企業が積極的に投資している。米国企業は前年比31%増の113億ドル(1兆2430億円)を、英国企業は前年比で約4倍の34億ドル(3740億円)、インド企業は前年比で約5倍の24億ドル(2640億円)を、それぞれ投資した。
中国の2017年の投資総額は前年比72%減の28億ドル(3080億円)だった。2016年は過去最高の100億ドル(1兆1000億円)だったが、これは中国のベンチャー企業が巨額の投資を一度に集めた超大型案件があったためである。1件当たりの平均投資額も、2016年の1億8600万ドル(204億6000万円)に対し、2017年は1900万ドル(20億9000万円)になった。ただ1回で数億ドルを集める案件は、数は少ないが発生しているという。
日本の投資状況は、他国に比べて消極的と言わざるを得ない。2017年の投資額は1億500万ドル(115億5000万円)、案件数は24件にとどまった。対GDP(国内総生産)比で見ると、日本企業のFintechへの投資額は米国や英国、インドの30分の1にとどまっている。日本でもFintechが多数立ち上がり、金融機関や一部大企業との協業例も増えている。だが投資額をみる限りは「日本の潜在力を引き出しきれていない」(Accenture)と言える。
Accentureの金融サービス本部でシニア マネジング・ディレクターを務めるJulian Skan氏は、FinTechが資金を集められる背景を次のように説明する。
「中国、ロシア、中東といった新興国からの投資が増加し、FinTechへの投資総額が増え続けている。特に米国と英国のベンチャー企業にその傾向が強く現れている。銀行におけるB2B(企業間)Fintech事業の成功事例が増え、Fintech業界が拡大するに伴い、1回の投資が大規模になりつつある。また保険分野を対象にしたいInsurTechのスタートアップ企業が急増し、保険会社に新たな商機をもたらしている。インドでは、高額紙幣廃止後のキャッシュレスサービスに対する高い需要を受け、FinTechが急成長する結果になった」
なお本調査の調査対象は、ベンチャーキャピタルおよび未上場企業、株式会社および企業のベンチャーキャピタル部門、ヘッジファンド、アクセラレーター、政府系ファンドなどである。また、ここでのFinTech企業とは、「銀行業務やコーポレートファイナンス、キャピタルマーケット、財務データ分析、保険、決済や個人向けの財務管理などにテクノロジーを提供する企業」と定義している。