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地震発生時の体感震度を共有し防災に生かすアプリ、JX通信社が提供

DIGITAL X 編集部
2020年8月20日

地震発生時に、人が感じた体感震度をスマートフォンで収集・シェアする仕組みを、報道分野のベンチャー企業であるJX通信社が開発し提供を開始した。震度計の計測データと合わせることで震度情報の速報性と正確性を高め、防災に生かせるとする。同社のニュースアプリの1機能として実装する。2020年8月17日に発表した。

 JX通信社が同社のニュースアプリ「NewsDigest」の機能として開始する「精密体感震度」は、地震の際に、人の主観による震度である体感震度を地域ごとに収集し、シェア・表示する仕組みだ(図1)。地震が発生した地域に住む人の体感震度を共有し、防災に生かしたい考えだ。利用者が体感震度を報告することで、地盤情報や住宅の耐震性などの意識向上につながるともする。

図1:地震発生時には、「NewsDigest」アプリの画面上で体感震度をボタン操作で報告できる

 地震が発生すればNewsDigestの利用者は、アプリ画面上に表示される体感震度の報告ボタンを使って、感じた震度を入力し情報を共有する。利用には、アプリの「通知」と「位置情報の収集」を許可する必要がある。収集した位置情報は、体感震度の表示や研究データとしての活用という目的でのみ使用するという。データは匿名化され、個人情報は取得しない。

 地震時に気象庁が発表する震度は、全国に約4300点の震度計のデータを元に決められている。ただ震度計が居住区と離れていたり地盤が異なったりすることから、発表される震度と体感震度には差が生じている。

 この差を補おうとするのが精密体感震度の機能だ。たとえば、夜間に大地震が発生した場合、その被害をすぐに上空から調査することは困難だ。地域住民から「体感震度6弱」といった報告があれば被害状況が想定されるし、その場所より震源に近い地域では、より大きな被害が生じていると推測できる。地震発生時における救助の初動体制の貢献も期待する。

 位置情報と結び付けた体感震度の情報を集めることで、地震被害のリスクを事前に把握し、対策ができる可能性がある。JX通信社は、本機能の提供により、南海トラフ地震や首都直下地震などの大地震に備えた防災・減災の取り組みへの応用を目指す。

 本機能は、地震学者の慶應義塾大学・大木 聖子 准教授の監修のもと、産学連携のプロジェクトで開発した。