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農業IoTのファームノートHD、酪農のデジタル化を実証する自社牧場を立ち上げ

DIGITAL X 編集部
2020年9月25日

農業IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を手掛けるスタートアップ企業のファームノートホールディングスが、酪農のデジタル化を実証するために自社牧場を立ち上げた。搾乳の自動化など酪農生産における技術を実証し、生産者への提供を目指す。2020年9月4日に発表した。

 ファームノートホールディングス(ファームノートHD)は、農業IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を手掛けるスタートアップ企業。今回、子会社のファームノートデーリィプラットフォーム(ファームノートDP)を通じて、北海道に自社牧場を立ち上げた(図1)。IoTやAI(人工知能)、自動化技術などを導入し生産性の向上を図り、その生産技術を酪農生産者へ提供したい考えだ。搾乳牛110頭、全飼養頭数170頭を飼育する。

図1:自社牧場を立ち上げて酪農生産の技術を検証する

 ファームノートDPは、牛を管理するためのクラウドサービス「Farmnote Cloud」や、動物の行動を分析する「Internet of Animals」、牛のためのウェアラブル端末「Farmnote Color」を提供している。自社牧場においても、これらの技術を利用して生産性の向上を図る。

 自社牧場ではまず、人と牛に最適な生産環境を目指した新たな牛舎を設計・建設した。自動搾乳ロボット(デラバル製)を中心に、搾乳から繁殖、乾乳、分娩、育成、治療までの作業が、1つの牛舎内で完結するようにした(写真1)。

写真1:牛舎に導入した自動搾乳ロボット

 新牛舎では、Farmnote CloudとFarmnote Color、自動搾乳ロボットを導入し生産データを収集し分析する。牛舎の状況は、クラウドカメラでリアルタイムに観察するほか、「ボディコンディションスコアカメラ」を使って栄養状態を評価する。牛の画像から、牛体への脂肪蓄積程度を見て、牛の栄養状態を評価する。

 牧場管理者は遠隔から牧場の状況を把握し従業員に指示を出したり、獣医師など専門家が遠隔から生産状況を確認してアドバイスをしたりできる。

 獣医師が常駐し、疾病予防に重点をおいた牛群管理マニュアルの作成など飼養管理にも取り組む。具体的には、分娩前後の牛に配慮した牛舎設計や、自動開閉カーテンによる暑熱対策、自動フットバスの設置による蹄病予防などだ。

 自動搾乳ロボットや整備されたマニュアルによって、従業員の習熟度にかかわらず業務を再現できるようにする。教育の効率化も期待する。

 牧場としては、環境負荷の低減や動物の快適性にも配慮する。糞尿を固液分離機で処理し、分離した固形分を敷料として利用することで、牧場から排する家畜排せつ物を30%程度削減している。