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降雨時の河川水位を予測するAIシステム、富士通が発売
富士通は河川の水位を6時間先までリアルタイムに予測するAI(人工知能)システムを開発し、2021年3月15日に発売した。現在の雨量と水位データ、システムが算出する予測雨量を基に予測する。雨量や水位に関する過去のデータが少ない中小規模の河川についても予測できるという。2021年3月4日に発表した。
富士通の「FUJITSU Public Sector Solution Social Century Resilience AI水管理予測システム powered by Zinrai」(以下、AI水管理予測システム)は、10分ごと6時間先までの水位をリアルタイムに予測するためのシステム(図1)。近年深刻化している大雨による河川氾濫の危険を未然に把握し、避難勧告などに関する自治体の意思決定を支援する。
AI水管理予測システムの特徴は、河川の測量データや大量の過去の観測データを必要としないこと。河川測量が実施されていない地点や、水位計など観測設備の整備が不十分な河川についても水位を予測できる。
水位予測に利用するデータは、予測雨量と現在の雨量、水位データの3つ。予測雨量は、気象庁発の「降水ナウキャスト」と「降水短時間予報」の1kmメッシュごとの予報雨量の位置情報から算出する。
そのために富士通は、流域からの雨水の流出を表現した流出関数法による関数を作成。過去の雨量や水位データを用いた機械学習により最適なパラメーターを導き出す水位予測モデル(数理モデル)を富士通研究所と共同で構築した。この水位予測モデルを用いて河川水位を予測する。
この方法により、流量観測などのデータを用いた標準的な水位予測の方法と同等の精度が得られることを確認済みだという。河川の改修や洪水などに伴う環境変化に対しても、変化後の雨量や少量の水位データを用いた再学習により、水位予測モデルを短期間に最適化できるとしている。
水位予測結果は「コンテンツ作成機能」によりグラフ表示ができる。水防対応や住民避難の発表時の目安として設定されている水位の超過予測を「危険度予測マップ」として可視化することで、現場への出動や避難勧告発令に向けた迅速かつ的確な意思決定を支援できるという。
近年、ゲリラ豪雨や台風などで河川が氾濫し深刻な被害が多発している。地方自治体の管理する中小河川においては特に、集中豪雨の影響で水位が急激に上昇し、短時間で被害が拡大する災害が発生している。
地域住民への避難指示に向けては、今後の降雨による河川の状況変化を迅速に把握する必要がある。だが従来の河川水位予測では、河川測量データや過去の雨量および水位、流量など膨大な観測データが必要で、中小規模の河川ではデータ量不足などから、水位予測が困難だった。
AI水管理予測システム powered by Zinraiの価格は600万円(税別)。予測対象水位局数により異なる学習モデル作成やシステム構築費用が別途必要になる。