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金融・保険・法務のための自然言語処理機能を米IBMが強化

DIGITAL X 編集部
2022年1月13日

金融や保険、法務の業界に特有の文書群から洞察や知見を見出すための自然言語処理機能を米IBMが強化している。それぞれのビジネスに特有の言葉や言い回しを識別するためのカスタマイズや学習を容易にする。AI(人工知能)技術を使った検索エンジン「Watson Discovery」の拡張機能として追加する。2021年11月10日(現地時間)に発表した。

 米IBMが強化するのは、AI(人工知能)技術を使った検索エンジン「Watson Discovery」の自然言語処理(NLP)機能。金融や保険、法務の業界を対象に、各業界に固有の文書から、新しい洞察や知見を見出せるようにする(図1)。これにより、例えば保険金の請求処理や財務分析、法的な取り決めや契約のレビューなどにかかる時間を短縮し、日常業務の自動化や顧客対応の強化などを支援する。

図1:金融や保険、法務向けに米IBMが強化する自然言語処理(NLP)機能のイメージ

 主な機能強化点は、データサイエンスのスキルを持たないユーザーでも基本的なNLPモデルのカスタマイズや学習ができるようにすること。保険金請求書に記載された請求理由や影響を受けた製品名など、業界に特有の言葉や言い回しなどの認識率向上が容易になる。

 学習面での強化点の1つが「カスタム・エンティティー抽出機能」。アクティブラーニングや大量注釈機能によってラベル付けを簡略化するほか、シンプルなモデルを配備することでトレーニング時間を短縮する。

図2: NLPモデルをカスタマイズするための「カスタム・エンティティー抽出機能(ベータ版)」の画面例

 もう1つは「パターン作成機能」。文書内にある業界特有のテキストパターンの特定速度を高める。2つの事例があれば、その根底にあるテキストパターンの学習を始められるという。その後は利用者のフィードバックに基づいてパターンを改良することで、規則や表現の定義などの手作業を不要にする。

図3:業界特有のテキストパターンを特定するための「作成機能(ベータ版)」の画面例

 いずれの機能も、Watson Discoveryの「Premium」プランでベータ版として利用可能になっている。

 ほかにも、文書構造理解機能も用意する。文書が持つ視覚構造とレイアウトを自動的に把握するための学習済みモデルを提供することで、複雑な表構造や画像の中にあるテキストが見つけられるようになるとする。

 Watson Discoveryなどの機能を契約管理に利用した例として、英ContractPodAiが提供する契約書ライフサイクル管理(CLM:Contract Lifecycle Management)のための基盤「One Legal Platform」を挙げる。社内の法務担当チームが法的シナリオやプロセス、文書を管理するための基盤で、クレームやRFP(提案依頼書)のレビュー、知的財産のポートフォリオ管理などの機能を提供しているという。