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サプライチェーンでの温室効果ガス排出量を追跡するためのシステム、NRIが実証

DIGITAL X 編集部
2022年3月3日

温室効果ガス排出量を取引先を含めて追跡/把握するためのシステムの実証実験に野村総合研究所(NRI)が取り組んでいる。排出量を実測値に基づいて把握し、取引先との間で排出関連情報をやり取りできる仕組みとしての提供を目指す。2021年12月15日に発表した。

 野村総合研究所(NRI)がプロトタイプを開発した「カーボントレーシングシステム(NRI-CTS)」は、サプライチェーンにおけるCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガス(GHG)の排出関連情報を追跡/把握するためシステム(図1)。GHG排出量を取引先からの概算でなく、実測値に基づいて、より正確に追跡・把握するための実証実験を2021年12月から2022年3月にかけて実施する。

図1:「カーボントレーシングシステム(NRI-CTS)」ではサプライチェーンでの温室効果ガス排出量を追跡/把握する

 サプライチェーンにおけるGHGの量は、(1)SCOPE1:自社の直接排出量、(2)SCOPE2:エネルギーの購入と消費に伴う間接排出量、(3)SCOPE3:取引先などでの間接排出量の3つのカテゴリーに分けられている。

 NRI-CTSでは、3つのSCOPEの別に、GHG排出量をCO2換算したカーボンフットプリントやエネルギー消費量などを期間を指定して集計できる。情報の伝達では、トレーサビリティーの確保と改ざんリスクの排除を図っているという。また企業間連携が重要なことから、SCOPE1の可視化に関しては、NRI以外のシステムプロバイダーが提供する仕組み/サービスとの連携も視野に入れる。

 排出関連情報としては、カーボンフットプリントやエネルギー消費量のほか、従来のカーボンオフセット(CO2排出の相殺/埋め合わせ)のクレジット量と証書、再生可能エネルギーの利用量、GHG排出削減量、GHG排出量の計測や算定の正確性に関する情報(ISO14001やGHG第三者検証結果)を同時に伝達できる。

 そのためにNRI-CTSは、GHG排出関連情報を調達先から受信し、それに自社内の直接・間接排出をひも付けて、取引先企業単位/製品出荷単位で送信情報を作成する。算定時には、社内消費した環境価値やオフセットクレジットは自動で減算処理する。減算分は、外部公開サーバー経由で第三者に公開することで、確認や監査の手間を削減するとしている。

 証書や取引関係の登録、情報入力・編集はブラウザー上で操作でき、情報はメールのように送受信できる。納入先と調達先の関係は「企業表」で、製品と部品の関係は「部品表」でそれぞれ定義する。

 SCOPE3においては、(1)取引先から排出量の提供を受ける方法(実測値)と、(2)活動量を自社で収集し該当する排出原単位を掛け合わせて算定する方法(原単位計算)とが認められている。NRIによれば、後者を採用する企業が一般的だが、排出原単位の見直しが頻繁ではないため、サプライチェーン各社におけるGHG排出削減に向けた取り組み成果が適時に反映されないという課題がある(図2)。

図2:企業間のGHG排出量情報のやり取りに伴う課題の例

 一方で、排出量の提供を求められる企業においては、取引先からの個別調査に対応する負荷が大きいなどが課題になっている。