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航空機用構造材料のシミュレーションサービス、東北大学とNECが開始
航空機に使われる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を開発するためのシミュレ―ションサービスを、東北大学 大学院工学研究科とNECが2022年5月から開始している。スーパーコンピュータを使い、理論や実験、解析などの科学技術を融合した「マテリアルズインテグレーションシステム」によるシミュレーションを実施し構造材料の開発期間を短縮する。東北大学とNECが、2022年3月18日に発表した。
東北大学とNECが開始した「CoSMIC(Comprehensive System for Materials Integration of CFRP)」は、航空機の主要構造材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と、その構造を開発するためのシミュレーションサービス(図1)。東北大からは 大学院工学研究科と同大学院情報科学研究科、同サイバーサイエンスセンターが参加する。2022年度中にクラウドサービスとしての提供を検討する。
CoSMICでは、理論や実験、解析、データベースなどの科学技術を融合することで材料の研究・開発期間を短縮する「マテリアルズインテグレーションシステム」によるシミュレーションを実施する。材料選択と機体設計という異なるスケールの特性を同時に解析することで開発期間の短縮につなげる。
CoSMICは、(1)利用者インタフェース、(2)CFRP材料・構造開発のためのシミュレーション、(3)実行プラットフォームの3つの要素からなっている。
利用者インタフェースは分子スケールの材料特性から巡航時の機体に生じる力学応答までを、スーパーコンピュータ上の実行プラットフォームでシミュレーションする環境を提供する。その操作には、Linuxやスーパーコンピュータの知識は不要だとする。
シミュレーションの内容は「CoSMIC利用促進委員会」を通じ、最新の研究成果として公開される。同委員会は、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」によって設立された。
CoSMICは、SIPの1つ「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」の研究成果である。東北大学を中心に開発した航空機用複合材料・構造開発向けシミュレーション技術とスーパーコンピュータの高速化技術、NECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を組み合わせて開発した。
NECによれば、航空機や自動車などに使われる構造材料には、強度を中心に種々の特性が求められる。その開発には10~20年という期間が必要になるケースもある。世界的にデジタル化が進み、市場への投入期間の短縮が求められるなか、高性能な材料・構造を短期間かつ効率的な開発が求められている。