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スマートファクトリーに取り組んでいるのは4割未満、アビームの調査

DIGITAL X 編集部
2024年9月13日

「スマートファクトリーに取り組んでいる企業は4割未満。企業規模が1兆円超でも6割以上は着手できていない」――。こんな調査結果をアビームコンサルティングが2024年8月21日に発表した。調査結果から同社は4つの課題を指摘してもいる。

 アビームコンサルティンの『スマートファクトリーの現状調査』は、日本企業におけるスマートファクトリーへの取り組み実態と課題を知ることを目的にした調査。製造業に従事する6186人を対象に実施した。

 スマートファクトリーへの取り組みでは、「モデル工場を設定し、スマートファクトリーに取り組んでいる」とする企業が23.5%、「モデル工場での取り組みが完了し、他工場への展開を進めている」という企業は9.4%だった。両者を合わせてもスマートファクトリーに取り組んでいる企業は4割に満たなかった。企業規模別でも、売上高1兆円以上の企業でも38.6%だった。

図1:スマートファクトリーへの取り組み状況(出所:『スマートファクトリーの現状調査』、アビームコンサルティング)

 スマートファクトリーで目指す姿としては、「完全自動化の実現」が45.7%と最も高かった。それに「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」が20.9%、「匠の技術継承の実現」が13.7%で続く。ただ業種別で見ると、化学や鉄鋼・非金属・金属などのプロセス産業では「工場とサプライチェーンデータの連携」が約3割あり、サプライチェーンへの対応を重要視していた。

図2:スマートファクトリーで目指す姿(出所:『スマートファクトリーの現状調査』、アビームコンサルティング)

 目指す姿の進捗度では、半数以上の企業が「上手く進んでいる」とする一方で、「匠技術の伝承の実現」を除けば4割以上の企業が「上手く進んでいない」としており、取り組みが二極化しているようだ。

図3:目指す姿に対する進捗度(出所:『スマートファクトリーの現状調査』、アビームコンサルティング)

 「完全自動化」と「工場データとサプライチェーンデータの連携」を目指す企業は、課題として「人材や資金不足」を第1に挙げる。コメント欄では、「個別工程の自動化」や「サプライチェーンデータ活用のモデルケースの不足」「完成後の業務イメージがない」といった課題も挙がっている。

 スマートファクトリーへの取り組み対する経営層のコミットメントと、その取り組みの成否の関係性を見たところ、「経営層の活動理解度が高く、積極的に参加している」という企業では83.3%が「上手くいっている」と回答した。経営層の積極的な参画とコミットメントが、スマートファクトリーの成否に大きな影響を与えることが分かる。

図4:経営層のコミットとスマートファクトリーの成否の関係性(出所:『スマートファクトリーの現状調査』、アビームコンサルティング)

 ただ、経営者のコミットが強い企業でも、課題として「人材不足」や「活動予算」を挙げる企業が多い。経営者はコミットするだけでなく、予算や人員など現場のリソースの確保にも関与する必要があると考えられるという。

 今回の調査結果を受けてアビームコンサルティングは、スマートファクトリーに取り組む企業に対し、大きく4つ課題を指摘する。

課題1=スマートファクトリーの将来像の巻き直しが必要

 何を目的とした活動なのか、業務や効率性がどう変わるのかなど、将来の工場像を明確にしないまま、テーマありきでの技術適用や局所業務改善が先行している。

課題2=既存の延長にない工程・レイアウトなどの作り込みが必要

 既存の工程・レイアウトの延長線上の取り組みが多く、結果として自動機器が高額化し、ROI(投資対効果)を見込めないケースが多くなっている。既存ラインのカイゼン文化の衰退がみられる。

課題3=デジタルツインの活用が重要

 技術偏重でスマートファクトリーに取り組んできたものの、OT(Operational Technology:制御技術)を最も助けるシミュレーション技術であるデジタルツインの活用が進まない。

課題4=経営層は活動へのコミットだけでなくリソース確保も必要

 経営層がスマートファクトリーへの活動を理解・関与するほど活動は進みやすいものの、リソースへの対応は不十分な傾向にある。データ連携など部署横断での取り組みは経営層がリードする必要がある。

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