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AI医術による医療改善が可能とする日本の患者は33%、蘭フィリップスの調査
『Future Health Index 2025』日本語版より
「日本の医療従事者がAI技術の利用に楽観的であるのに対し、患者側のAI技術への信頼は低く、世界平均下回る」--。こんな調査結果を蘭フィリップスの日本法人が2025年7月28日に発表した。
蘭フィリップスの『Future Health Index(FHI)』は、医療現場に革新的テクノロジーが与える影響と、その可能性に関する調査。2025年版で10回目を迎え、2024年12月から2025年4月にかけて、世界16カ国の医療従事者1900人以上と患者1万6000人以上を対象に実施した。
同調査結果をまとめた『Future Health Index 2025 - Building trust in healthcare AI - Perspectives from patients and professionals』(FHI 2025)には、グローバル版のほかに各国版がある。日本版では今回、国内の医療制度が抱える課題に対しAI(人工知能)技術がどう支援できるかと、医療従事者と患者の間に存在する“信頼のギャップ”に焦点を当てたという。
FHI 2025日本版によると、日本の医療従事者の75%が「AIと予測分析により早期介入が可能になり、命を救える」と回答、60%が「AIによって患者の転帰が改善される可能性がある」と回答し「楽観的に捉えている」(フィリップス)。一方で、患者側では「AIが医療を改善できると考えている」との回答は33%だった。世界平均の59%を大きく下回り「AI技術への信頼は依然として低い」(同)とする。
AI技術の適用領域別にみると、医療従事者の84%が「AIを活用して医療記録を作成することに自信を持っている」とするのに対し、同様に感じる患者は30%にとどまり、54ポイントの開きがある。それに「個別化された治療計画の作成」と「兼背結果やスキャンの処理」が、それぞれ44ポイント差で続く(図1)。
この信頼のギャップを埋めるためには「医療従事者による丁寧な説明」や「AI技術の安全性・有効性に関する透明性の確保」「法的責任の明確化」「データセキュリティの強化」などが必要だとする。特にAI技術に詳しい患者ほど「より高いレベルの説明責任と安全性を求める傾向」がある。
医療現場の改善に対しては「5年前と比べて患者と過ごす時間が減り、事務作業に費やす時間が増えた」とする日本の医療従事者が約22%あった。約65%は「データアクセスの問題により1回の勤務シフトあたりの診療時間を失っている」とし、そのうち5人に1人以上は「1シフトあたり45分以上の診療時間を失っている」とした。
また自然災害が多い日本では、AI技術を使った災害時のトリアージやリソース配分の最適化に注目が集まる。同分野では、AI技術の導入遅れによる「時間の損失」「早期介入の機会損失」「ケアの質の低下」などのリスクが指摘されている。
医療現場へのAI技術の導入に対しフィリップスは「人間中心の設計」「人とAIの連携強化」「有効性と公平性の実証」「明確な指針の整備」「セクター横断的なパートナーシップの構築」の5つを提言する。テクノロジーと信頼が両輪になることで「より多くの人々に、より良い医療を届ける未来の実現が可能になるとしている。