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AIを前提にした業務変革をFDEを含む専門チームで支援するサービス、日本IBMが本格展開

上田 羽純(DIGITAL X 編集部)
2026年11月5日

日本IBMはAI(人工知能)エージェントなどの利用を前提にした業務改革を支援するサービスの国内での本格展開を始めている。業務に最適化したAIエージェントの開発・実装を支援するFDE(Forward Deployed Engineer)を含む専門家チームが、業務の分析から再設計、さらには企業が自ら業務変革を継続できる体制の構築までを支援する。業務分析にもIBMの知見を反映したAIツールを利用する。2026年8月25日に発表した。

 日本IBMの「IBM Enterprise Advantage」は、業務変革を支援するコンサルティングサービスである。各社がAI(人工知能)エージェントの利用を前提にした業務改革を進めるとともに、そのために必要なAI基盤の構築・運用を支援する。世界では2026年5月に提供を開始し、日本では2026年8月25日から本格展開を始めている。

 AI前提の業務改革は(1)業務のマクロ分析、(2)業務再設計、(3)構築、(4)運用の4工程で進める(図1)。

図1:「IBM Enterprise Advantage」のAI前提の業務改革の実行プロセス

 業務のマクロ分析により企業の業務全体を見渡し、AI技術導入の効果と実現性が高い領域を絞る。そのうえで人が判断している部分と処理の流れを整理し、AIエージェントに任せる作業と、人が介入する作業、従来のプログラムで処理する作業を区分して業務の流れを再設計する。併せて、AIエージェントが参照する企業固有の知識や、投資対効果も定める。

 再設計した業務の流れを基にAIエージェントなど必要なアプリケーションを構築。本番運用の開始後はAIエージェントを監視/評価しながら随時改善するとともに、社内への横展開を図る。

 飲料大手の蘭HeinekenはIBM Enterprise Advantageを導入する1社。190超の国で500超のブランドを展開する同社では、現地法人ごとに業務の進め方とデータの形が揃っていなかった。そこでまず、同社のデジタル&テクノロジー部門の働き方を、開発・運用・改善のサイクルを短期間で回す業態へ再設計したうえで、財務、サプライチェーン、小売りのプロセスとデータを揃える共通基盤を構築したという。現在は4つの現地法人が本番運用を始めている。

6つの役割を持つ専門チームがFDEと連携し支援

 IBM Enterprise Advantageは、業務改革支援に、AI技術の実装を担う技術者であるFDE(Forward Deployed Engineer)を含む専門家チーム「FDU(Forward Deployed Unit)」が当たるのも特徴の1つだ(図2)。

図2:IBM Enterprise AdvantageのコンサルティングにはFDEを含む専門家チーム「FDU」が当たる(左)。FDUも業務分析などに専門AIエージェントを利用する

 FDUのメンバーは、プロジェクト成果に責任を持つリード、業務設計、アプリ設計、システム構築、データ整備、AI駆動アプリ構築という6つの役割からなっている。FDEと連携しなながら、業務の進め方や人の役割の見直しを一体で進めるという。

 FDUは、業務の分析や設計などに、それぞれに専用開発したAIエージェントを利用する(表1)。FDUのメンバーが各AIエージェントに指示を出し、その結果を元に、例外対応や顧客企業と対話する。Process StudioとProduct Workbenchは2026年内の提供を予定する。

表1:「IBM Enterprise Advantage」でコンサルタントが利用するAIエージェント
名称主な機能
CBM.ai業務を機能単位に分け、AI技術の導入効果が見込める範囲を可視化する
Process Studio業務手順書などを分析し、人とAIエージェントが協働する業務フローと実装用の設計書を生成する
Context Studio企業固有の用語、規定、手順などを、AIエージェントが参照できる知識として整備する
Product Workbench設計書を元に、AI技術を組み込んだアプリケーションを開発する
Advantage Insights部門/業務/AIエージェント別のAIサービス利用量や費用、投資対効果を可視化する
AI Workspace文書やデータ、作成したAIエージェントを企業内で共有、再利用する

企業自身が業務変革を継続できる体制構築までを支援

 IBM Enterprise Advantageでは、FDUによる業務改革にとどまらず、企業自身が変革を継続できる体制の構築までを支援する。FDUとともに、対象業務の選定や再設計、実装、効果の確認などを経験した企業の担当者が、コンサルティング用AIエージェントなどを使いながら、自らの知識や経験を使って他業務にも展開できるようになるという。移行期間は、企業の規模や難易度、体制に応じて調整する。

 日本IBM 常務執行役員 成長戦略統括事業部長の川上 結子 氏は「これまでのコンサルティングの中で米IBMが培ってきた業務変革の方法論を、実行手順やAIエージェントとして提供し、企業の業務変革担当者が使い続けられるようにした」と説明する(写真1)。

写真1:日本IBM 常務執行役員 成長戦略統括事業部長の川上 結子 氏

 IBMが体制移行を重視するのは「個別業務にAIエージェントを導入するだけでは、全社的な成果へ結び付かないという問題意識がある」(川上氏)ためだ。「業務プロセスの再設計と、自社の知識のAIエージェントへの付与、人とAIエージェントの働き方、投資対効果と統制の全社管理の4点を継続できるよう支援する」(同)としている。

 企業が利用するAIエージェントの実行環境は、クラウドまたはオンプレミスに構築し、マネージドサービスとして提供する。利用料金はパワーユーザー数とAI処理量の単位であるトークン量に応じたサブスクリプション型になる。日本IBMは2026年内に20件のFDUによる導入支援開始を目標にする。