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仏ミシュランが船便によるコンテナをリアルタイムで追跡、LPWAを採用しサービスの外販も

DIGITAL X 編集部
2018年6月12日

タイヤメーカー大手の仏ミシュランが、船便におけるコンテナの位置をリアルタイムで追跡するシステムを本番稼働させると同時に外販を開始した。世界中を移動する物流コンテナを追跡できるという。2018年5月24日に発表した。

 仏ミシュランが開発したのは、海上輸送するコンテナの配送状況を追跡するためのシステム。LPWA(Low Power Wide Area)の通信技術「Sigfox」の通信機能を搭載したデバイスと、GPS(全地球測位システム)など衛星による測位に対応する機能などを組み合わせている。Sigfoxを提供する仏Sigfoxと、コンサルティング会社の仏Argon Consultingと共同開発した。

 コンテナにはSigfox搭載デバイスを設置する。同デバイスは、加速度センサーや温湿度センサー、明度センサーを搭載している。これらにより、コンテナ内の温度をモニタリングしたり、コンテナの扉が開けられたかどうか、設定した地域の外に出ていないかなどが分かる(図1)。

図1:コンテナ内に「Sigfox」に対応した通信デバイスを設置することで、コンテナ内の状況を把握する

 ミシュランは1年前から、このシステムの開発に参画し、実際の利用を一部で始めている。パイロットシステムでの試算では、貨物が定刻通りに到着するケースが40%増加し、船便で運ばなければならない貨物の量が10%減少したとしている。積み荷が破損した場合も、位置をリアルタイムに把握できるため、たとえば嵐に遭遇したなど、原因の把握が容易になったという。

 ミシュランらによれば、世界の年間貨物輸送量はコンテナにして9000万以上で、うち2000万ほどがヨーロッパ諸国間の輸送である。また国際海運による輸送時間は長く、その間には海運業者のほかに、陸上輸送業者や、貨物引受業者、港湾荷役業者、荷受人、通関など25以上の関係者が関わっている。貨物を最終的に受け取る消費者や業者へのサービス品質を高めるには、貨物の現在位置をリアルタイムで把握することが長年の課題だった。

 これまでも追跡システムを開発する動きはあったものの、これまでは、通信端末が高かったり、電池によるデバイスの動作時間が短かったり、あるいは、コンテナ内からの通信が困難だったりした。完成したシステムが独自規格のため、世界共通で使えないという問題もあった。

 今回のシステムでは、コンテナ内に置く通信デバイスにSigfoxを採用することで世界各国で使えるようにした。Sigfoxが使用する周波数帯が862M~928MHzで、国によって使用する周波数が異なるが、使用できる周波数を自動的に検知し、適切な周波数で通信するからだ。

 こうした特徴を生かし、コンテナ追跡サービスとして外販する。システムは、コンテナ1つから利用でき、大量コンテナの追跡にも対応できるという。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名仏ミシュラン
業種製造
地域仏クレルモン・フェラン
課題複数国にまたがっての海上輸送中のコンテナをリアルタイムに追跡したい
解決の仕組みコンテナ内の状況をセンシングしたデータをコンテナ外に送信するために、世界各国で利用できる通信規格「Sigfox」を採用することで、輸送地域によらず共通にコンテナを追跡できるようにする
推進母体/体制仏ミシュラン、仏Sigfox、仏Argon Consulting
活用しているデータ加速度センサーや温湿度センサー、明度センサーで取得したコンテナ内の状況データ、GPSによる位置データなど
採用している製品/サービス/技術LPWA(Low Power Wide Area)の通信技術「Sigfox」(仏Sigfox製)ほか
稼働時期2018年5月24日からサービスの外販を開始。仏ミシュランは1年前からパイロットシステムの開発に参画