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大同特殊鋼、金型用鋼材のトレーサビリティシステムを中国で稼働

DIGITAL X 編集部
2018年6月29日

特殊鋼大手の大同特殊鋼は中国で、金型用鋼材の取引履歴を追跡するトレーサビリティシステムを2018年6月11日に本格稼働させた。偽造品の混入を防ぐ。システムは凸版印刷のID管理システムをカスタマイズした。

 大同特殊鋼が中国で稼働させたのは、金型用鋼材に関する一連の取引履歴を記録するシステム。鋼材の製造から販売、切断、金型製作、その金型を使ったプラスチック製品の成形までの取引を追跡する(図1)。履歴管理用サーバーはクラウド上で稼働している。

図1:鋼材の製造、販売など一連の取引履歴をクラウドのサーバーに記録する

 併せて、大同特殊鋼の正規販売店は、鋼材を販売する際にQRコード月の「販売証明書」を添付する(図2)。鋼材の購入者は、証明書にあるQRコードをスマートフォンで読み取ることで、鋼材の取引履歴や成分情報を確認できるため、偽造品でないことを確かめられる(図3)。

図2:販売店が発行する販売証明書の例。大同特殊鋼が製造した鋼材であることを証明する
図3:販売証明書に印刷してあるQRコードをスマートフォンで読み取ると、鋼材の取引履歴などの情報を確認できる(左)。偽造された販売証明書では、QRコードを読み取ると販売履歴が存在しないというメッセージが表示される(右)

 販売証明書には、マイクロ文字や透かし、コピー防止印刷といった偽造防止技術を活用している。販売証明書を偽造しても、QRコードに対応する販売履歴データが存在しないため、QRコードを読み取った時点で証明書も偽造であることが判明する。

 大同特殊鋼はこれまで、鋼材に対し工場出荷時に「鋼材検査証明書」を添付してきた。だが鋼材は、最終顧客に届くまでに複数の販売店などを経由し、かつ、その過程で鋼材を顧客が必要とする大きさに切断するため、鋼材検査証明書と現物を比較しても真偽の判断が難しかった。真正品を確実に入手したいとする顧客の声が多かったことから、取引履歴を記録することにした。

 まずは中国で偽装品が多数流通している「NAK80」材の取引履歴から記録する。NAK80は、プラスチック製品成形用金型に向けた特殊鋼である。

 2018年6月11日の時点で、本システムを導入している販売店は6社。今後は、本システムを導入する販売店を増やしながら、取引履歴を記録する鋼材の種類を拡大していく。

 本システムは、凸版印刷が持つ統合ID認証プラットフォーム「ID-NEX」の技術を使い、大同特殊鋼向けにカスタマイズしたもの。証明書の偽造防止技術も凸版が持つものだ。凸版印刷は今後、ID-NEXを使った新しい技術/サービスを開発・提供していくとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名大同特殊鋼
業種製造
地域名古屋市東区
課題金型用鋼材の偽装品が流通し、顧客から真正品を確実に入手したいという要望が高まっていた
解決の仕組み大同特殊鋼から最終顧客までの流通過程における取引履歴をクラウド上で管理し、その情報をスマートフォンで確認する
推進母体/体制大同特殊鋼、凸版印刷
活用しているデータ鋼材の取引履歴、鋼材の成分情報など
採用している製品/サービス/技術統合ID認証基盤「ID-NEX」、「金型用鋼材トレーサビリティシステム」(いずれも凸版印刷製)
稼働時期2018年6月11日