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熊谷の権田酒造、清酒造りの技術伝承に向けたIoTを実証実験へ

DIGITAL X 編集部
2018年7月25日

埼玉県熊谷市の権田酒造は、清酒造りの技術を伝承するために、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを使ったノウハウの可視化効果にdついて実証実験を、次の仕込み時期である2018年10月上旬から2019年3月下旬まで実施する。仕込み時の温度変化と、その時に熟練者が採った動きなどを記録し、温度管理のモデルを作成する。実験に協力するNTT東日本の埼玉支店が2018年6月26日に発表した。

 権田酒造が実施するのは、清酒の製造工程における温度管理の仕組み。仕込み用タンクと、同タンクを置いてある仕込蔵の合計3カ所に温度センサーを設置し、温度変化を24時間監視する。並行して、アルコール度数や糖度といったデータや、熟練者などの作業手順を記録し、手入力でデータ化することで、仕込み工程のモデルパターンを導き出したい考え。モデルパターンは後継者育成などに利用する。

 発酵によって進む清酒の仕込み工程では、周辺環境に合わせた仕込み用タンクの温度管理が重要である。しかし、その調整は熟練者の経験や勘に頼る部分が多く、技術伝承が難しかった。労働力不足や後継者不足が顕在化する中で、熟練者の手順を可視化・モデル化することで技術の伝承を図る。

 温度センサーには、光ファイバーを使う仕組みを利用する(図1)。電気を使ったセンサーと比べると清酒の品質に影響を与えないという。通信設備用部品や各種センサーを開発・製造する渡辺製作所が開発した。

図1:仕込み用タンクの温度管理に利用する温度センサーの計測器本体(左)とセンサーケーブル。渡辺製作所が開発した

 測定した温度データは、NTT東日本が運営するクラウド上に蓄積。異常を示す温度変化を検知したら管理者に警告を発する。警告を受けた管理者は外出先でも仕込み用タンクの温度を確認でき、必要な対策を指示することができる。

 権田酒造は今後、蓄積した温度データと作業記録に、外部のデータなどを加味しながら、仕込み工程のモデルパターンを作成する。実験に協力する渡辺製作所とNTT東日本は、他の清酒メーカーへの提供や、新たなデータ活用法などを検討していく。

 なお今回の実験は、埼玉県産業振興公社から 「埼玉県ものづくりIoT強化支援事業補助金」の採択を受けたもので、 同補助金により環境を構築する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名権田酒造
業種製造
地域埼玉県熊谷市
課題清酒造りは熟練の酒造り職人の経験と勘に頼る部分が大きく、効率良く後進に教える方法がなかった
解決の仕組み清酒造りの仕込み工程をネットワーク接続の温度センサーで24時間監視し、温度変化に応じた適切な作業のモデルパターンを作る
推進母体/体制権田酒造、渡辺製作所、NTT東日本 埼玉支店
活用しているデータ仕込みタンクと仕込蔵の温度データ、温度変化に応じた作業記録など
採用している製品/サービス/技術光ファイバーで温度を検知するセンサー(渡辺製作所製)、クラウド環境(NTT東日本製)
稼働時期2018年10月上旬〜2019年3月下旬