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聖マリアンナ医大ら、救急医療現場の改善に5Gを活用する実証実験を開始

DIGITAL X 編集部
2022年1月26日

聖マリアンナ医科大学、トランスコスモス、NTTドコモ、川崎市の4者コンソーシアムは、救急医療現場の業務改善に向けて5G(第5世代移動通信システム)を活用する実証実験を2021年12月6日から取り組んでいる。聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)の救命救急センターにおいて、救急業務の効率を高め医師の長時間労働の改善を目指す。2021年12月2日に発表した。

 聖マリアンナ医科大学、トランスコスモス、NTTドコモ、川崎市の4者コンソーシアムが取り組むのは、救急医療現場における5G(第5世代移動通信システム)を活用することの実証実験。多対多の医師や病院間のリアルタイムコミュニケーションや、医療機器が生成する大容量動画データの転送、処置状況の判定へのAI(人工知能)技術の適用などを検証し、救急医療現場における業務効率を高め、医師の長時間労働の改善を目指す。

 実験では5つのシステムを構築する。(1)360度カメラなどによる俯瞰的な映像およびスマートグラスを利用した医師の手元映像の共有、(2)院内をストレッチャーで移動する患者の映像の共有、(3)遠隔CT画像の共有、(4)大容量X線動画データの転送、(5)気管内チューブなどの位置のAI判定である。

 俯瞰的な映像などの共有では、患者のバイタルモニターや、経過を記載したホワイトボード、対応スタッフなどが360度カメラの映像を通じて情報を共有できるようにする(図1)。また重症外傷患者の治療に当たる医師がスマートグラスを装着し、手元や患部の様子を遠隔にいる医師の端末に配信する。これらにより、医師が常に現場にいなくても患者の様子が分かるため、必要なタイミングで出向くことで、現場への滞在時間の減少と現場にいる医師数の削減を見込む。

図1:360度カメラなどによる俯瞰的な映像とスマートグラスを使った医師の手元映像を遠隔から共有する

 患者映像の共有では、ストレッチャーに複数の可搬型カメラを取り付け、救急患者の映像を遠隔にいる医師のタブレットに送る。医療行為を行えないスタッフが移動を担当していても、患者の状況を医師が遠隔から把握することで、移動担当者の人数削減および精神的負担の軽減を図る(図2)。

図2:院内をストレッチャーで移動する患者の映像を共有する

 遠隔CT画像の共有では、モニター表示されたCT画像を4Kカメラで撮影し、画像診断医がタブレット端末上でリアルタイムに確認できるようにする(図3)。既存の画像配信システムではCT画像の転送に時間がかかり迅速に診断できないという課題がある。

図3:遠隔CT画像をリアルタイムに共有する

 大容量のX線動画データの転送でも、リアルタイムな画像情報の解析を可能にする(図4)。現状、X線動画は画像生成専用サーバーを操作して転送する必要があり、撮影から診断までに1時間以上かかっているという。

図4:大容量X線動画データをリアルタイムに転送する

 気管内チューブなどの位置のAI判定では、モニターに映し出された患者のX線画像を4Kカメラで撮影し、その画像をクラウド上のAIシステムで自動判定できるようにする(図5)。現状、医師は気管内チューブの位置を確認するためだけにX線画像を改めて診断しており、その作業の削減を目指す。

図5:気管内チューブなどの位置をAIで判定する

 4者コンソーシアムによれば、高齢化の進展により、救急医療需要が急速に高まっており、救急医療の業務効率化と医師の長時間労働の改善が課題になっている。今回の実証は、総務省が公募した「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択され、実施する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名聖マリアンナ医科大学、トランスコスモス、NTTドコモ、川崎市の4者コンソーシアム
業種医療・健康
地域川崎市(聖マリアンナ医科大学病院)
課題高齢化の進展により、救急医療需要が急速に高まっており、救急医療に当たる医師の労働時間が長時間になっている
解決の仕組み医療関連データを5Gネットワークを介して遠隔地からリアルタイムに共有し、医師が常に患者のそばにいなくても良いようにしたり画像診断を自動化したりする
推進母体/体制聖マリアンナ医科大学、トランスコスモス、NTTドコモ、川崎市
活用しているデータ救命救急処置の様子を撮影した映像やCT画像、X線画像など
採用している製品/サービス/技術5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)、スマートグラス、360度カメラ、4Kカメラ
稼働時期2021年12月6日(実証実験の開始時期)