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JPX、取引システムでの監視アラートの対処に生成AI技術を本格適用

DIGITAL X 編集部
2026年11月2日

JPX(日本取引所グループ)は、取引システムの監視アラートに対する対処手順を生成AI(人工知能)技術で絞り込む仕組みの本格運用を2026年10月に始めた。熟練者の経験に頼ってきた初動判断の品質を、オペレーターの経験の差に左右されないようにする。2026年10月20日に発表した。

 JPX(日本取引所グループ)は、東京証券取引所や大阪取引所などを運営し、株式やデリバティブ商品などの取引を担う40以上のシステムを24時間365日体制で集中監視している。2026年10月から、取引システムの運用監視業務に生成AI(人工知能)技術を本格適用している(図1)。オペレーターの初動判断を後押しできるようにし、運用業務での属人化を解消するのが目的だ。

図1:生成AI技術でアラートへの対処手順の候補を絞り込み、オペレーターの初動判断を後押しする仕組みの概要

 新たな仕組みでは、管理中にアラートが発生すると、生成AI技術が対処手順の候補を絞り込み、判断根拠とともにオペレーターに示す。正しい対処手順候補を絞り込んだ割合を示す判断精度は、97%以上に達している。

 本格適用に先立つPoC(Proof of Concept:概念実証)では、JPXが蓄積してきた1万件以上のインシデント事例と対処手順をデータとして用意。アラート発生を想定した約1600件のテストケースで、生成AI技術による対処手順候補の絞り込みに対して検証・評価・改良を重ねた。

 その過程で、回答の判断根拠を示す機能や、生成AI技術が誤りやすい項目についてプロンプト(指示文)を補う機能、手順の絞り込み精度を高める機能などを実装し、チューニングを継続した(図1)。その結果、ハルシネーション(幻覚)を抑えつつ、回答品質を高められたという。

 今後は適用範囲を段階的に広げる。現在は人が担う障害発生時の初動切り分けや、その後の対処業務に対してAIエージェントを適用するなど、人とAI技術が協働する次世代の運用モデルへと発展を目指す。

 アラート対処には、統合システム運用管理ソフトウェア「JP1 Cloud Service」(日立製作所製)のSaaS(Software as a Service)版が備える生成AIアシスタントを採用した。日立製作所は、20年以上にわたりJP1シリーズによるJPXのシステム運用業務を支援しており、両社は2022年から運用業務の高度化について検討を進めてきた。

 JPXの取引システムは、売買やリアルタイムの相場情報を扱い、投資家や金融機関の日々の取引を支えている。その安定稼働は金融市場の公平性・信頼性を左右するため、障害時には、影響範囲や対処方針を迅速かつ的確に判断する必要がある。従来、アラート発生時の対処手順は、熟練者による長年の運用ノウハウや専門知識を頼りにしてきた。

 一方で、IT人材の不足が進み、熟練者のノウハウの継承や運用品質の維持、持続可能な運営体制の構築が課題となっていた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日本取引所グループ(JPX)
業種金融・保険
地域東京都中央区(本社)
課題金融取引システムの障害時には迅速かつ的確な初動判断が求められるが、熟練者の経験に依存しており、人材不足の中で運用品質を維持しなければならない
解決の仕組みアラート発生時、過去のインシデント事例から対処手順の候補を判断根拠と共に提示する生成AI技術を導入し、オペレーターの初動判断に利用して運用業務の属人化の解消を図る
推進母体/体制日本取引所グループ、日立製作所
活用しているデータ1万件以上のインシデント事例と対処手順、アラート発生を想定した約1600件のテストケース
採用している製品/サービス/技術統合システム運用管理ソフトウェア「JP1 Cloud Service」の生成AIアシスタント(日立製作所製)
稼働時期2016年10月(適用開始時期)