- Column
- DXのラストワンマイルを支えるAI-OCR
どうしてもなくせない“紙”をデジタル化するAI-OCR
脱・手入力から業務プロセスの自動化、データ活用まで
製品/サービスの機能だけでなくシステム面での考慮も必要
適用範囲が広がるAI-OCRだが、その導入・利用にあたっては留意すべき点もある。主な留意点としては以下が指摘されている。メリットの裏返しでもある。
●留意点1=認識精度は100%ではない :手入力や修正・確認作業を完全にはなくせない
●留意点2=自動化は完全ではない :全てのケースで自動化が実現できるわけではない
●留意点3=製品によって違いがある :多数の製品/サービスが提供されており、それぞれに機能・精度などが異なる
●留意点4=運用が必要 :学習や追加学習など運用体制を整備する必要がある
●留意点5=セキュリティリスク :セキュリティの確保は常に発展段階にあり想定外のリスクを招くことがある
上記の留意点を踏まえたうえで、製品/サービスを選定する際、機能面では以下のような点を考慮する必要がある。
考慮点1:認識精度と確認・検証のバランス
AI-OCRには、認識精度99%超を実現している製品/サービスも多い。だが、100%でない限り、読み取り内容の確認・検証は不可欠だ。認識精度だけでなく、確認・検証にかかる手間やコストも考慮する必要がある。ただ認識精度はAI技術の進化とともに今後も向上することが見込まれる。
考慮点2:汎用型か業務特化型か
適用したい業務に対し汎用型では対応できない場合、業務特化型も検討する。業務特化型は追加学習による精度向上が期待できるが、その分、追加コストが発生することがある。
考慮点3:日本語対応か多語対応か
読み取り対象が日本語だけでよいのか、帳票に日本語以外の言語が含まれることがあるのか、海外拠点でも利用するのかなどを踏まえ、多言語対応の必要性を確認する。
考慮点4:認識以外に必要な機能を備えているか
製品/サービスによっては、文字だけでなく、写真や画像、音声をも組み合わせて認識する機能や、認識結果のチェック機能などが用意されている。認識精度だけでなく、そうした機能は必要かどうか、カスタマイズができるか、追加学習の方法などを確認する。
これらの機能面に加え、システム的な面でも考慮すべき点がある。
考慮点5:クラウド型かオンプレミス型か
最近のAI-OCRは、SaaS(Software as a Service)によるクラウドサービスとして提供されるものが多い。ただし読み取り対象の画像データをクラウド環境に出したくない場合は、オンプレミス環境に対応しているかを確認する必要がある。
考慮点6:ツールやシステム連携が可能か
一連の業務プロセスとしての自動化を図りたい場合は、RPAツールとの連携やAPI(Application Programming Interface)などによるシステム連携が可能かどうかを確認する。
最近は、CRM(Customer Relationship Management:顧客管理)やSFA(Sales Force Automation:営業管理)などのシステムにAI-OCR機能が組み込まれたり、オプションで用意されたりするケースもあるため、連携したいシステム側での対応も検討する。
考慮点7:ライセンス費用は適切か
AI-OCRの効果が確認できれば、その適用範囲を拡大することが考えられる。そうした際にライセンス費用が大幅に高くならないかなど、ライセンス体系を事前に確認する。
考慮点8:実績、サポート体制
冒頭で説明したようにOCRは国内で50年の歴史を持つ技術領域だ。技術面だけでなく、業務への適用や他システムとの連携、認識したデータの活用方法などへの経験・ノウハウにも違いがある。サポート体制とともに検討することが望ましい。
DXの文脈でデータ活用への期待が高まる中、手書きを含めた紙情報をやり取りする場面は、まだまだ完全にはなくならない。AI-OCRは、そうしたアナログ情報をデジタル情報に変える有効なツールである。上述したようなメリット/デメリットや、導入・運用上の留意点なども考慮しながら製品/サービスを選び、自社業務のデジタル化/自動化を前進させたい。