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- データ分析/生成AI活用を成功に導くためのデータ連携入門
業務のデジタル化の進展がデータ連携を求めている【第1回】
データ連携を支える代表的な手段がETLとMFT
これら4つの要素を実現する代表的な手段に(1)ETL(Extract、Transform、Load)と(2)MFT(Managed File Transfer)があります(図2)。
ETL(Extract, Transform, Load)
構造化データを対象に、Extract(抽出) → Transform(変換) → Load(格納)するプロセスに特化した手段です。
例えば、販売システムから売り上げデータを抽出し、分析用に整形して、BI(Business Intelligence)ツールに渡すといった場面で利用します。 変換処理をGUI(Graphical User Interface)を使って設定できるETLツールも多く、業務部門でも扱いやすい点が特徴です。
ETLは、次のような用途に適しています。
•データベース間の連携(例えば、RDB:Relational DataBaseとDWH:Data WareHouse)
•集計・加工・フィルタリングを伴う処理
•データ分析や可視化のための準備
MFT(Managed File Transfer)
ファイル連携を安全かつ確実に自動化・管理するための仕組みです。
データ連携では、ファイル単位の連携が求められるケースが少なくありません。特に、レガシーな業務システムや外部パートナーとのやり取りでは、ファイル単位での交換が今も主流な手段です。金融、製造、流通などの業界ではMFTが定着しており、ETLとは異なる文脈で利用されています。
そのためにMFTは以下の機能を提供します。
•ファイルの暗号化・送受信
•転送状況の監査ログ管理
•失敗時のリトライ・通知機能
シチュエーションに応じた連携手段の選定が重要に
ここまで、データ連携の4つの要素と、それを支えるETLやMFTといった手段を紹介してきました。しかし実際の現場では「どのような状況で、どのような連携手段を選ぶべきか?」という判断が非常に重要になります。例えば次のようなシチュエーションが考えられます。
•生成AI技術を利用するためのデータ連携
•データ分析のための基盤整備
•マスターデータを複数システムで一貫性を持たせる設計
こうしたシチュエーションごとに、気をつけるべきポイントは異なってきます。ただ、いずれのシチュエーションでも、まず着手すべきは、自社内に既にETLやMFTなどのツールや仕組みが導入されているかどうかの確認です。既存の仕組みを利用できるのか、あるいは今後の拡張に向けた見直しが必要なのか。その現状把握こそが、データ連携の成功に向けた第一歩になります。
次回は、実際のユースケースを元に「どんなときに、どんな連携の考慮が必要になるのか?」を掘り下げていきます。
高坂 亮多(こうさか・りょうた)
セゾンテクノロジー CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)。2007年新卒入社、2025年より現職。流通業向け業務アプリケーションの開発を皮切りに、クラウド移行やモバイルアプリケーション、コグニティブ技術を活用したアプリケーションなど先端技術領域の開発をリードしてきた。近年はデータエンジニアとして分析基盤の構築やAI活用プロジェクトを推進している。