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  • DX戦略を実現する顧客接点強化のための自社アプリの開発・運用の基礎

自社アプリリリースの命運を握るテスト工程【第6回】

小地戸 孝介(フェンリル 開発センター 開発2部 課長)
2026年1月28日

サービス提供に向けた“最後の砦”になる「受け入れテスト」

 受け入れテスト(UAT:User Acceptance Testing)は、発注者が自社アプリをリリースしてよいかどうかを最終判断するための工程です。発注者が主体になり、実際の利用者の視点を交えながら、アプリがビジネス要求を満たしているかどうかを最終確認します。

 受け入れテストでは、総合テストで使用したシナリオを再利用することもありますが、一般的には、より実業務に即した独自のシナリオを作成し実施します。最大の目的が、アプリが業務要件を充足し、サービスを提供できるだけの品質レベルに達しているかどうかの判断だからです。

 実際にアプリを操作すると、細かな改善要望が多数挙がることが予想されます。しかし、この段階での過度な仕様変更は、予期せぬ不具合を招き、品質を低下させるリスクがあります。「当初の業務要件を満たしているか」「サービス運用に支障がないか」という本来の目的に立ち返り、修正の要否を慎重に判断しなければなりません。

 受け入れテストは発注者主導で進める工程です。ですが、開発ベンダーとの密接な連携は欠かせません。「期待していた挙動と異なる」といった違和感や指摘事項を早期に共有し、積極的にコミュニケーションを取ることが、円滑なリリースへと導く鍵になります。

リリースはゴールでなくサービスの安定提供に向けたスタートライン

 テスト工程をクリアすれば、いよいよ「リリース」というプロジェクト最大の節目を迎えます。しかし、リリースはゴールではなく、サービスに命を吹き込むスタートラインです。公開を成功させ、その後のサービスを長期的に安定させるためには、本番公開作業に加え、公開後の運用を見据えた準備が不可欠です。

 まず実務面で注意すべきはアプリストアへの申請です。「App Store」や「Google Play」の審査には数日から数週間かかる場合があり、ガイドラインへの抵触によるリジェクトのリスクもあります。公開予定日から逆算し、提出物やメタ情報の準備、再申請の期間を含めた余裕のあるスケジュール管理が求められます。

 次に、サービス開始後の運用体制を構築します。リリース後は発注者が主体になって運営するため、開発ベンダーからの円滑な引き継ぎが欠かせません。具体的には、管理画面の操作マニュアルや、不具合が発生した際の連絡網をまとめた『システム運用手順書』を整備する必要があります。

 これら文書の作成や運用設計には開発側との連携が欠かせません。早い段階から開発ベンダーに協力を依頼し、計画的に準備を整えることが、不測の事態を防ぎ、サービスの信頼性を高めるための近道です。

 今回説明した流れは一般的なものですが、テストに正解の定型はありません。アプリの性質によっては、工程を簡略化しスピードを優先する場合もあれば、実環境での挙動を確認するフィールドテストを追加する場合もあります。大切なのは、ターゲット層や求める品質基準を開発ベンダーに明確に伝え、プロジェクトに最適化されたテスト計画を共に議論し、創り上げることです。

 険しいテスト工程を乗り越えれば、いよいよリリースですが、サービスを安定して成長させるためには、リリース後も開発ベンダーと強固な協力関係を維持し改善を積み重ねる“運用・保守の視点”が不可欠です。次回は、その重要性について説明します。

小地戸 孝介(コジト・コウスケ)

フェンリル 開発センター 開発2部 課長。2020年4月にフェンリルに入社し、プロジェクトリーダーに就任。自動車販売会社、塾、建設機械メーカー、保険会社など、多岐にわたるクライアントのWebアプリやネイティブアプリの開発プロジェクトを成功に導く。メガバンクのプロジェクトマネジャーとして組織マネジメントも担当している。関わったプロジェクトでは良好な顧客関係を築いている。