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  • スマートホームで越境する空間ビジネスの好機

スマートホームがもたらす空間管理の民主化【第2回】

新貝 文将(X-HEMISTRY 代表取締役/CSA日本支部 代表)
2026年7月16日

前回は、グローバル標準規格「Matter(マター)」を軸に、スマートホーム技術が「便利な家電」から「空間の業務基盤」へと変貌しつつある全体像を提示しました。今回は、その変化の最前線としてこの技術基盤をいち早くビジネスに転換した企業のモデルと、DX(デジタルトランスフォーメーション)を見据えた運用面での業務改善の効果を掘り下げます。

 前回は、住宅向けのスマートホーム技術がビジネスを支える空間基盤へと進化している潮目について解説しました。その変化を推し進めているのは、グローバル標準規格「Matter(マター)」によるデータモデルの統一です。メーカーの壁を越えてデバイスが共通言語でつながることで、AI(人工知能)技術の活用や空間の自動制御が可能になります。

BtoC向けスマートホーム技術の利便性をオフィスや店舗へ展開

 BtoC(企業対個人)向けのスマートホーム技術をBtoB(企業対企業)基盤に転換した企業として、まず挙げるべきは、日本でも事業展開する米Alarm.com(アラームドットコム)です(図1)。同社は2000年代初頭、住宅向けのスマートホームセキュリティサービスをBtoBtoC(企業対企業を介した対消費者)モデルであるSHaaS(Smart Home as a Service:サービスとしてのスマートホーム)で提供するプラットフォームの形で誕生しました。

図1:Alarm.comはSHaaS(Smart Home as a Service)のプラットフォームとして、住宅や小規模事業所向けにセキュリティや設備管理機能を提供する

 当時、BI(Business Intelligence)ツールを開発する米MicroStrategyのスピンオフとして創業した同社は、当初からデータ活用を事業の核に据えてきました。サービスを住宅オーナーに直接販売するのではなく、米国を中心に世界約1万2000社のプロバイダー(サービス提供事業者)を介して届ける分業体制を敷き、事業拡大を続けています。

 近年、Alarm.comが注力するのが、住宅向け基盤のBtoB展開です。防犯カメラやスマートロック、アクセスコントロール(入退室管理)、スマートサーモスタット(自動温度調節器)といったデバイスを組み合わせます。

 システムは、1つのダッシュボードから全拠点を一括で管理する多拠点管理機能を強みとしています。この利便性がFC(Franchise Chain:加盟店方式)のオーナーや、複数店舗を展開するチェーン経営者から特に支持を集めています。本部と加盟店の間で設備管理の仕様を統一でき、店舗の状況をくまなく把握したいという、経営側の強いニーズに応えるものだからです。

 同様の軌跡を歩む存在が、韓国Samsung(サムスン電子)のスマートホーム基盤「SmartThings」です。

 元々、家庭向けに展開してきたSmartThingsは、ビジネス向けに「SmartThings Pro」として機能を拡充し、オフィスや商業空間の管理ツールへと進化を遂げています。詳細は後の回で取り上げますが、家電エコシステムを持つ大手企業がB2Bの空間管理市場に本格参入したという事実は、この分野の潮目が変わったことを示すシグナルといえます(https://partners.smartthings.com/smartthings-pro)。

大企業の特権だった空間管理を民主化している

 Alarm.comやSmartThings Proは、建物の設備を一元管理するBMS(Building Management System)のアクセス管理、環境モニタリング、エネルギー制御、映像監視といった機能を、月額数千円〜数万円のサブスクリプション型で提供可能にします(図2)。

図2:「SmartThings Pro」のダッシュボードの画面例。施設内の稼働率や環境データ、エネルギー効率などを可視化する(「CES2025」より筆者撮影)

 SMB(Small and Medium Business:中小企業)にとって最大の訴求点となっているのは、管理者がスマートフォンから直接設定を変更し、状況を確認できる運用の手軽さです。専門の施工業者と保守契約を結ばなくても、自前で管理体制を敷くことを可能にします。