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ビジネス環境のクラウドシフトでデータの監視が重要に、米Splunk日本法人の福島社長

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年12月1日

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、顧客向けサービスや、バックオフィスシステムの裏側では、さまざまなクラウドサービスが連携するようになり、複雑さが増している。大量データを管理・監視するための基盤を提供する米Splunk日本法人の福島徹エリアヴァイスプレジデントに、企業におけるデータ管理の課題と解決策などについて聞いた。

――Splunkは、クラウド環境を含めたトラブル対応には「ログ」が役立つと主張している。

 ログには、どのシステムが、いつ何をしたかが記録されている。従来のシステム監視におけるデータの数値化(メトリクス)と追跡監視(トレース)に加えて、あらゆるマシンから吐き出されるログに基づく分析を加えることで、リアルタイムな運用にも生かせる。

Splunk日本法人代表 エリアヴァイスプレジデントの福島 徹 氏

 システムにおいて問題が起きたとき、どうなっているかを知ることはもちろん大事だ。だが、その次に「なぜそうなったのか」を判断する必要がある。特に顧客向けのサービスをクラウド上で展開している企業にとっては、なぜトラブルが起きたのかを数分あるいは数秒のうちに判断し対処する必要がある。

 コンテナ環境などの新しいテクノロジーによって、開発と運用は効率化が図られている。半面、どこで、どんなプログラムが動き、データがどう流れているかをリアルタイムに把握することが難しくなっている。トラブル時の自動復旧機能なども出てきているからといって「監視をしないでいい」ということにはならない。

 クラウドでもオンプレでも、障害はゼロにはできない。重要なのは、情報の動きを管理下に置くことで早期に問題の原因を発見し、適切に対処することでサービスの継続性を確保することだ。これを当社では「オブザーバビリティ」と呼んでいる。

 システム障害やセキュリティ問題が発生すれば、顧客や関係当局への説明責任が発生する。オブザーバビリティは、企業が自社のデータをコントロールしていることを示す必須の能力になると思っている。

 Splunkは、テキストデータであればオンプレでもクラウドでも、あるいは両者の混在環境でも、データを無加工で取り扱えるプラットフォームを提供している。企業がマルチクラウド環境でビジネスに応じて、さまざまなサービスを組み合わせても、それらすべてから集めたログの分析結果を即座にビジネスの現場に返せる。

――データ基盤の考え方自体は目新しいものではない。

 データ基盤の重要性について、日本の大企業は「わかっているけれども、まだ実現できていない」という企業が多い。その原因は2つある。古いシステムを長年使ってきたことと、組織がサイロ化され、その中で改修を積み上げてきたことだ。

 今でこそCIO(最高情報責任者)/CDO(最高データ/デジタル責任者)/CISO(最高情報セキュリティ責任者)などが置かれてきているが、企業全体のデータ管理を見通して俯瞰できるリーダーが存在しなかったことも大きな理由だろう。

 これらの理由から、欧米と比べてデータ駆動型経営への移行が遅れているのが日本企業の現状だが、今は変革を起こす好機である。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって企業は、静的なデータ分析による「昨年はこうだったから今年はこうなる」という予測が全く通用しない状況に直面した。

 一方で、感染拡大から半年以上が経ち、企業にはすでに何万という感染拡大後のデータが蓄積されている。今、リアルタイムなデータに反応できる組織を作れれば、環境変化に対応できる企業に変われる。ここに目を向けるのか、見て見ぬフリをするかは企業次第だ。

――Splunkは、ここ数年で分析プラットフォームのクラウドシフトを推進してきた。

 我々の大きな目標は、データのプラットフォーマーとしての標準を担う立場になることだ。そのために、いわゆるCS(カスタマーサクセス)の取り組みに力を入れている。プラットフォームのクラウドへの移行もそのためで、クラウド化により顧客企業は、社内へのデータ活用が提案しやすくなる。

 当社は、システム監視やセキュリティ管理の領域で業績を伸ばしてきた。だが、クラウドプラットフォームへの移行を機に、ビジネス領域のデータ分析基盤としても活用が広がっている。

 従来の主要顧客は、IT部門やセキュリティ部門だ。今後も、IT運用とセキュリティの部門には、より深く導入を進めるが、そこからの横展開により、ビジネス部門へも利用拡大を図っていく。運用監視もビジネスデータの分析も、同じプラットフォーム上にサービスを追加できるため、新たに利用したい部門は投資額を抑えられる。

 Splunk自身のKPI(重要業績評価指標)は1年半前にARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)に変更し、サブスクリプションモデルへの移行を急ピッチで進めてきた。2020年第2四半期のARRは前年同期比50%増の19億5000万ドルだった。

 前年同期比50%以上の成長は7四半期連続だ。これはSaaS(Software as a Service)企業として知られる米Service Nowや米Salesforce.com、米Workdayなどの同時期の成長速度と比べても速い。

 日本法人としては今後、データ基盤のビジネス利用拡大に向けた体制を強化し、企業内に埋没したデータの掘り起こしを図っていく。顧客企業の感触はよい。