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生成AI時代に向け全社の非構造化データをクラウドストレージで一元管理
アサヒグループ 執行役員 DX統括部 部長 山川 知一 氏
アサヒビールやアサヒ飲料など国内事業を統括するアサヒグループジャパンが、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みに力を入れている。その一環から、文書ファイルなど非構造化データを全社で一元管理するためにクラウドストレージを採用し、2024年春までに全データを移行させた。アサヒグループの執行役員 DX統括部 部長の山川 知一 氏に、グループにおけるDXの位置付けや、非構造化データの全社一元管理の狙いなどを聞いた。(聞き手は志度昌宏=DIGITAL X編集長、文中敬称略)
――アサヒグループではDX(デジタルトランスフォーメーション)を、どのように位置づけ、推進しているか。
企業として「これまでのビジネスの延長ではダメだ」という強い思いがある。もちろん、今まで通り維持するものもある。だが「変革に向けて変化し続けなければならない」「選択肢を増やしたい」という考えに基づき、中長期の計画の中にDXを組み込み実行している。
その変革に向けて、DX統括部がITを含めて一括して管理している。システム導入においても「古いものを新しくする」という作業を単にこなすのではなく、ビジネスに与える影響や、社員の仕事のやり方をどう変えていくのかという観点から取り組んでいる。
従来、システム部門はアサヒビールの組織だった。利用者との距離が近いというメリットがある一方で、システムがサイロ化したり、全体を把握できなくなったりすることがある。そうしたデメリットが顕在化してきたことからDX統轄部を設置し、インフラの再整備に取り組んでいる。全体のアーキテクチャーを策定したうえで、古いシステムを整理しながら、インフラを1つにまとめていく。
アーキテクチャーを定める上で最も重視しているのはSoR(System of Record)、すなわち基幹システムの領域だ。基幹システムは20年を超えて稼働しているものが多く継続が困難になっている。単に更改するのではなく、疎結合を意識したり、プロジェクトの仕方を変えたりしながら、データ活用が可能な新基盤を実現したいからだ。
並行してユーザー部門での市民開発も推進している。DX統轄部内にユーザー部門を担当するチームを設け、ユーザー部門と共にDXに取り組む。担当チームには例えば、ビール担当、飲料担当、ビール生産担当などがある。上流工程から担当チームが参加し、システム導入だけでなくビジネス変革に導いたりしている。システム導入は手段の1つであり、導入しなくても良いケースも多いためだ。
――データ活用は順調に進展しているか。
アプリーション連携のためのデータ連携基盤を「GCP(Google Cloud Platform)上に整えた。日々生成されているトランクザクションデータはDWH(Data Warehouse)などで分析できるようにしている。
ただデータ活用については、まだまだ課題があるのが現状だ。「データを自分の手元に置いて管理したい」というユーザーニーズが強いことに起因する。クラウドにデータを置くことが目的ではないが、クラウドサービスの利用を推進している中で、データが自分の手元にしか存在しない状況では、全社でのデータ活用は進まない。