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2020年までに全企業がAIに投資?! 印TCSのグローバル調査

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2017年9月27日

AI(人工知能)に対し既に80%の企業が投資しており、2020年までには、ほぼ100%の企業が投資する予定−−。こんな調査結果をインドの大手インテグレーターであるタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)が2017年9月27日に発表した。世界の4地域で13業種を対象に調査したもので、835人の企業経営者が回答した。企業競争力を確保するためにAIを活用しようとする動きが急拡大していることが分かる。

 調査レポート『進歩する能力、発展する業界:世界の13業界におけるAI活用実態調査』によれば2015年の時点で13業種のいずれにおいても80%を超える企業がAIに投資している。エネルギー業界は100%で、ハイテク、通信、小売り、自動車の4業界が90%を超えている(図1)。そして全企業が2020年までにはAIを利用する予定だとしている。ここでいうAIはCognitive(認識)技術である。

図1:Cognitve(認識)技術の業種別の利用状況(『進歩する能力、発展する業界:世界の13業界におけるAI活用実態調査』より)

 投資額の全業種平均は7000万ドルで、最も平均が高かったのは保険業界の1億2400万ドル。それに消費財の9500万ドル、通信の9000万ドルが続く(図2)。逆に最も平均が低かったのは旅行業界の400万ドルだった。売上高に対する投資割合でみると、消費財の0.66%が最も高かった。

図2:AIに対する業種別の投資額と、売上高に占める割合(『進歩する能力、発展する業界:世界の13業界におけるAI活用実態調査』より)

 こうした結果について、TCSのCTO(最高技術責任者)であるAnanth Krishnan(アナンス・クリシュナン)氏は、「AIに多額の投資をし大きな効果を感じているのは、劇的な変化のただ中にある保険業界のようなレガシー産業界や、AIを活用したイノベーションによりカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上を期待する消費財業界などに集中している」と述べている。

 AIへの投資対効果について、2014年と2015年の比較において、売上高の改善とコスト削減の両面で明確な効果があったとしている。全業種平均では売上高では17%、コスト削減では12%の効果がみられた。最も売上改善したのは通信業界の25.15%、それにハイテクの22.18%、小売りの18.71%が続く。最も低いユーティリティ(電気/ガス/水道)業界でも9.26%である(図3)。

図3:AIを適用した領域における2014年に対する2015年の売上高改善率の平均(『進歩する能力、発展する業界:世界の13業界におけるAI活用実態調査』より)

 一方のコスト削減でも、通信業界は19.5%の効果を得た。それに小売りの14.5%、ハイテクの14.4%が続く(図4)。

図4:AIを適用した領域における2014年に対する2015年のコストの削減率の平均(『進歩する能力、発展する業界:世界の13業界におけるAI活用実態調査』より)

 AI活用に向けた課題としては、「AIシステムのセキュリティリスクをどう管理するか」を最重要課題の1つに挙げている。加えて、「AIが提示した助言を経営陣や従業員が信頼すること」「AIの導入により生まれる新たなプロセスやシステムを従業員が習得すること」が重要だと認識されていた。

 逆に、AIに対して良く指摘される「AI導入により職を失うのではないか」といった不安への対応は、ほぼすべての業界が大きな障壁とは考えていなかった。むしろ、AIの活用で売上高やコスト改善に効果を見いだしている企業では、AIによるイノベーションにより「2020年までに各部門で少なくとも3倍の職が新たに必要になる」とみているという。