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愛媛大学と6法人、植物工場の各種データをAIで解析しトマトの収量拡大と労働時間短縮へ

DIGITAL X 編集部
2017年10月23日

植物工場で働く従業員の労働時間10%短縮を目指す研究が2017年10月中旬から本格的に始まる。「植物生体情報」「環境情報」「栽培管理・労務情報」をAIで解析し、効率的な栽培・労務管理システムにつなげる。農林水産省の委託プロジェクト研究「人工知能未来農業創造プロジェクト」の一環。研究の中核機関である愛媛大学と、7法人が2017年10月18日に発表した。

 プロジェクトのマスコットネームは「ai tomato(あいとまと)」。太陽光を利用してトマトを育てる植物工場を対象にする。研究では、工場の稼動状態を示す3種類のデータ「植物生体情報」「環境情報」「栽培管理・労務情報」を計測し、AI(人工知能)で解析することで、植物工場での労働時間の短縮を目指す(図1)。

図1:さまざまなデータを人工知能で解析して、労働時間短縮を目指す

 研究に参加するのは、愛媛大学のほか、PLANT DATA、PwCあらた有限責任監査法人、凸版印刷、協和、浅井農園、福井和郷の6法人。情報の計測技術の開発から始め、2021年度までに研究成果を活かした栽培・労務管理システムのサービス化を目指す。

 愛媛大学は、研究を統括し、植物工場に実装できる「多元的植物生体情報計測技術」の開発に取り組む。その技術を活かしてPLANT DATAがアルゴリズムを開発し、それを実装した計測解析ソフトウェアと多元的植物生体情報を活用するためのユーザーインタフェースを開発する。作業者の作業習熟度を高める作業指示アプリケーションも開発する。

 PwCあらた有限責任監査法人がAI関連技術を担当する。これまでの業務で蓄積してきたデータ分析、モデル構築、人工知能利用のノウハウを活かして、多元的植物生体情報に基づいた栽培・労務管理に活用するルールベースモデルを開発する。AI活用で欠かせない、データ形式とモデルも整備する。加えて、参加各社と連携し、労働時間10%削減に向けた改善シナリオを構築する。

 凸版印刷はBluetooth技術と画像解析技術を活かす。Bluetoothとネットワークカメラを利用したサービス「ID-Watchy」などを労務管理システムとして利用するための道筋を付ける。作業時の動き、作業者の労務実績といったデータを多元的植物生体情報を組み合わせて解析する。画像データから直近の収量を高い精度で予測し、作業者の最適な配置や、多元的植物生体情報と連動する収量予測システムも開発する。同システムでトマトの収量予測モデルを構築する。

 金型設計、射出成形などのノウハウと技術を持つ協和は、光合成蒸散リアルタイムモニタリングシステムの実用品化を受け持つ。浅井農園と福井和郷は、実証のための農場を提供する。浅井農園は環境調節に、福井和郷は労務管理にそれぞれ着目して実証を進め、収量増大と作業効率の向上を目指す。