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韓国ベンチャーが開発するIoTプラットフォーム「Thing+」が日本上陸へ

田中 克己(IT産業ジャーナリスト)
2017年11月7日

IoT(Internet of Things:モノのインターネット) プラットフォームを構築するためのソフトウェア「Thing+」が近く、日本市場に進出する。韓国のDaliWorksが開発・販売する製品だ。DaliWorksは、韓国SKテレコムを退社したSoonho Lee氏が2013年に設立したベンチャー企業。2015年にThing+のベータ版を、2016年から製品版を提供している。

 Thing+は、3つのソフトウェア群から構成される(図1)。(1)センサーなどのデバイスをクラウドに接続する「Thing+Embedded」、(2)センサーからのデータを収集し解析する「Thing+Cloud」、(3)解析結果を表示するダッシュボード機能の「Thing+Portal」である。PCやタブレット、スマートフォンなど表示/操作用デバイスを管理する機能も持っている。これらにより「1週間で接続テストまで完了できる」という。

図1:Thing+のシステム構成概念(韓国DaliWorksのHPより。トップ画像も同様)

 Thing+の開発に携わるエンジニアの数は5000人を超え、うち韓国人以外のエンジニアが約1500人に上る。韓国語に加えて、日本語、英語、中国語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語の7カ国語をサポートし、すでに世界25カ国以上で2000社以上の企業が導入しているという。

 センサーデータをリアルタイムに監視するThing+の適用事例は、ビジネスの現場から、生産設備やビル、都市の管理など幅広い。たとえば最適化では、あるコンビニエンスストアは、アルバイトなど店員の最適配置に利用している。毎日の来店客数から、月曜日は何人、火曜日は何人などと店員の配置人数と配置時間を決める。

 冷凍品や冷蔵品を配送するトラックの監視にも使われている。トラックの位置情報や速度、燃費をリアルタイムに監視することで最適な配送ルートを導く。車に搭載されている冷蔵庫の温度や湿度、ドアの開閉などを見て商品の保存状態も監視する。

 また療養病院では、院内の環境を快適にしたり、患者の位置や挙動を感知したりすることで、2次感染の予防や患者の危険のいち早い察知などに使っている。ここでも、ワクチンの保管冷蔵庫の温度を監視し、温度変化などの異常発生を知らせたりしワクチンの安全性を確保したりしている。

 遠隔地からの監視/制御の用途もある。ブラジルの冷凍冷蔵倉庫では、温度や湿度、CO2などを韓国から監視し、空調の最適化と空調設備などの故障や異常の検知に使っている。きのこ栽培農家では、ハウス内の環境を監視・制御し、品質の向上と収穫量の増加を図っている。日本でも近く、農業への導入が始まるという。

 日本市場では、韓国製ソフトウェア/サービスを輸入販売する三夢ジャパン(東京都中央区、権赫代表取締役)などを代理店にして販売する。海外の利用事例がコスト削減にとどまらないことから、日本でも新しい価値を生み出す仕組みとして市場を開拓する。

 Thing+の提供形態には、AWS(Amazon Web Services)やMicrowave Azureなどパブリッククラウド経由で提供する従量課金モデルと、オンプレミスで利用するソフトウェアライセンスモデル、API(Application Programming Interface)の使用量によって課金するモデルの3つがある。

 従量課金型での利用料金は、たとえば、野菜栽培のビニールハウスを対象にドアの開閉、温度と湿度、CO2のセンサーを取り付けた場合の参考価格が、センサーやゲートウエイなどのハードウェア費用が約35万円、ソフトウェアの初期費用が約10万円、月額使用料は6250円からになる。ほかに、ゲートウエイやセンサーなどの設置工事費が1日2人で8万円程度かかる。