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IoT歯ブラシ使い家庭と歯科医をつなぐサービス、サンスターと富士通が提供へ

五味 明子(ITジャーナリスト)
2017年12月26日

日本は予防歯科の後進国?!歯は磨いても自身の歯を保てず

 歯科医院向けクラウドサービスを共同開発した熊谷 氏は現在、8020運動の目標を超え、生涯を通じてすべての歯を守ることを目指す「KEEP28運動」を推進している。自身の30年間の治療実績では、「早くから予防歯科にかかり口腔内をケアし続ければ、達成可能な目標」だとする。

 にもかかわらず、日本では予防歯科の重要性が認識されず、80歳になれば多くの人が入れ歯になってしまうのは、「予防歯科は医療保険が適用されず、悪くなった歯の治療に重点が置かれているため」と熊谷氏は指摘する。結果「歯が痛くならないと歯医者に行かないようになってしまった。こうした状況は、他の先進国ではあり得ない」とする。

 たとえば、日本人の8割が1日に2回以上、歯を磨いており、他国と較べても非常に頻度が高い。にもかかわらず日本人の多くが入れ歯になってしまうのは、「患者に情報がきちんと行き渡っておらずホームケアの質が低いからだ。どんなに歯を磨いても、エビデンスのないホームケアでは意味がない」と熊谷氏は警鐘を鳴らす。

 歯科医療のあり方を根本的に変えるには、「治療に加え、定期的なメンテナンスと、質の高いホームケア、そして全データの共有が不可欠だ。これら4つがそろわなければ『人生100年時代』の健康は維持できない」(熊谷氏)とする(図4)。サンスターグループ オーラルケアカンパニーの淡島 史浩 マーケティング部 統括部長は「歯周病は心筋梗塞や心臓疾患の要因にもなり、最近は糖尿病との関連が強いことも明らかになっている」と、歯の健康をおろそかにすることの危険性を強調する。

図4:「人生100年時代」の歯の健康の維持に必要だと熊谷氏が指摘する4つの要素

 熊谷氏は、「従来の歯科治療では、もう口腔の健康は守れない。ITの力を借り、日本にも常識的な予防歯科プログラムを根づかせたい」と語る。サンスターと富士通が連携したIoTのサービスが、予防歯科の考え方を日本に普及させるきっかけになり得るのか、データ共有に基づくホームケアの“試金石”としても注目される。

写真:予防歯科医療の普及に取り組む歯科医師の熊谷 崇 氏(中央)と、サンスターグループ オーラルケアカンパニー マーケティング部 統括部長の淡島 史浩 氏(右)、富士通 第二ヘルスケアソリューション事業本部 ビジネス戦略統括部 新ビジネス推進部 室長の山田 直樹 氏(左)

 なお、サンスターと富士通は「2020年までに約500の歯科医院に新サービスを導入したい」としている。新サービスの価格は個別見積り。G・U・M PLAYの価格は1台5000円(税別)である。