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約4500社が参加したCES2018、日本企業の出展数49社は十分か
デジタルテクノロジーによって世の中がどう変化しようとしているのかを占う場所に姿を変えた「CES(シーイーエス)」。2018年は、米ラスベガスで1月9日から12日にかけて開催された。今回、JETRO(日本貿易振興機構)が「ジャパン・パビリオン」を、広告代理店の大広は「ジャパン・テック」というブースを、それぞれに構えた。
CES2018での会議や展示の中核は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AR(Argument Reality:拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実)、ロボット、さらには自動運転やスマートシティ、デジタルヘルス、スマートホームなど多岐にわたる。CESを主催するCTA(Consumer Technology Association:コンシューマ技術協会)のトップが「世界を変革させる技術が多数披露された」と自慢するように、出展企業数は過去最高の約4500社に上り、約20万の来場者が訪れた会場は活気と熱気に満ちていた。
CTAによれば、出展数が最も多かったのは米国の1745社。それに中国の1326社、フランスの338社、カナダの100社、イギリスの77社、オランダの66社、ドイツの54社、イスラエルの51社が続く。日本からは、トヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーや、パナソニックやソニーなどの家電メーカーが新製品や新しいコンセプトを発表し、存在感をアピールした。
ただし、日本の出展社数は、わずかに49社。とくにスタートアップ企業に限れば、JETRO(日本貿易振興機構)の「ジャパン・パビリオン」には6社、広告代理店店の大広が「ジャパン・テック」には12社が出展しただけだった。他国のベンチャー企業が集まるブースと比べれば、熱気にも違いが感じられた。
その理由の1つは、国のスタートアップ企業への支援姿勢。フランスやオランダなどは、約900社が出展するスタートアップ展示会場に大きなスペースを確保し自国のスタートアップを売り込んでいる。「ジャパン・パビリオン」も同じ展示会場にあったが、6社では押しが弱い。
もう1つの理由は、グローバル展開を図っている企業が少ないこと。世界で通用するだけの製品/サービスを創り出せていないからともいえる。そもそも、中堅・中小企業の存在感は薄い。そうした中で孤軍奮闘していたスタートアップ企業のいくつかを紹介する。
バイタルデータを取得するセンサー類をアピール
ミツフジ:銀メッキ電導性繊維を使うスマートウエア
西陣織工場として創業したミツフジは、自社開発した銀メッキ電導性繊維を使ったスマートウエアを出展した。電極やセンサー、トランスミッターなどを取り付け、スポーツウエアや介護ウエアなどとして提供することで、各種の生体情報の収集や管理を可能にする。
たとえば、建設工事現場の作業員がスマートウエアを着用すれば、心電の変化などから熱中症を予兆し、作業員が持つスマートフォンに注意が必要だと通知できる。要介護者の状態やドライバーの居眠り防止などにも使えるという。既に、建設現場や介護施設、バスケットボールの選手などで実証実験を重ねている。実験には、石川県金沢市でスポーツウエアなどを生産するカジグループや、セキュリティのサイバートラストなどが協業する。
Xenoma:赤ちゃん向けセンシングウエア
東京大学発ベンチャーのXenomaは、スマートウエア「e-スキン」の赤ちゃんを対象にした試作品を展示した。e-スキンは、モーションセンサーを備えるウエアで、ヘルスケアやゲームなどに使えるとして、約1年前に1枚約500ドルで発売した。ウエアに伸縮性があるセンサーや配線を貼り付けることで、運動フォームをモニタリングしたり、ゲームのコントローラに使ったりが可能になる。
現在、それらの技術を応用した赤ちゃん用ウエアを試作している。ある大学との共同研究によるもので、人の動きや呼吸、圧力、体温といったバイタルデータを取得できる。
トリプル・ダブリュー・ジャパン:排泄予知デバイス
ジャパン・パビリオンに参加したトリプル・ダブリュー・ジャパンは、排泄のタイミングを超音波センサーで察知する排泄予知デバイスを展示した。膀胱や腸などの体内での変化を超音波でとらえ、排泄のタイミングをモバイル端末などに通知する。日本国内では約150の介護施設などに1施設当たり3~4台が導入されている。米国進出は検討中だという。
オムロン ヘルスケア:心電計付き血圧計とウェアラブル血圧計
オムロン ヘルスケアは開発中の心電計付き血圧計とウェアラブル血圧計を参考展示した。「脳・心血管疾患の発症ゼロ」の実現を事業コンセプトに掲げる。心電計付き血圧計は、心電と血圧を同時に計測し、そのデータを医師らにメールで送信する。脳梗塞や心筋梗塞のリスクを予測するためには、これら2つのデータが必要になるという。
開発では、ウェアラブル型の心電計や管理ソフト、医療情報共有プラットフォームなどを持つ米アライブコアと業務提携している。米国市場での販売はFDAの認可取得によるが2019年3月を目指す。価格は未定だが、200ドル未満になりそうだ。