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ふくおかFGがデジタル戦略を加速、AIラボや共創施設を福岡に開設

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年1月31日

ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は2018年1月31日、昨年末にAI(人工知能)を地場企業が学べる場としてオープンした「OPEN AI LAB」が提供する「AI体験プログラム」の第1回を開催した。2018年3月には共創施設の「DIAGONAL RUN FUKUOKA」を開設するなど、地元企業を巻き込んでのデジタルトランスフォーメーションを加速するのが狙い。

 「AI体験プログラム」は、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)関連システムの開発を手がけるベンチャー企業であるグルーヴノーツが共同で提供する無料サービス。地場企業が昨年末にAI(人工知能)を学ぶための"場"として2017年末に両社が開設した「OPEN AI LAB」の中核サービスで、今回が第1期になる。

AIで「何ができるのか」を体験で探る

 AI体験プログラムでは、専門知識がなくてもAIを使ったデータ分析を可能にするグルーヴノーツの「マゼランブロックス」をツールに、ビジネスへのデータ活用を実際に経験するもの。月1回の講義を3回が1つの期で、第1期は(1)チャットボットの仕組みの理解、(2)参加者のデータを使った需要予測、(3)チャットボットと需要予測の連携を、講義間の"宿題"を含め実際にプログラミングを体験する。

FFGのデジタル戦略部サービスイノベーション推進室室長の東 慶太 氏

 FFGがOPEN AI LABの開設に至った理由を、デジタル戦略部サービスイノベーション推進室室長の東 慶太 氏は、「AIが重要だといっても、企業の現場では何に使えるのかを模索している状態。そこで自社データを使ってAIで分析してみることで『こんなことに使えそう』といったアイデアを共有していくことが、地域のデジタル化のテコになると考えた」と説明する。

 そのためOPEN AI LABでは、AI体験プログラムのほかに、体験者が自社事業にAIを活用しようと考えた際の支援や、Facebook内にラボ専用のグループを開設し、「行政や研究機関を含め、技術や各種情報のほか、体験プログラムで成果物なども公開し共有をうながす」(東室長)考えだ。

 さらにFFGは2018年3月下旬には、オープンイノベーション(共創)に向けた共有スペース「DIAGONAL RUN FUKUOKA」を福岡市中央区の親和銀行福岡ビルに開設する。

 DIAGONAL RUNは、コワーキングスペースやオフィススペースを提供し、そこにベンチャー企業などを含め、規模や業種が異なる企業や個人が集まることで、新たな協業などの創出をうながすもの。2017年4月に東京・八重洲に先行して開設した「DIAGONAL RUN TOKYO」の地元福岡版になる(関連記事『ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)、共創施設「DIAGONAL RUN TOKYO」で地域と技術をつなぐ』)。

 DIAGONAL RUN TOKYOはすでに大企業からベンチャー企業までが入居/利用しているほか、メガバンクを含めたFinTech関係者が集まる拠点としての役割も持ち始めている。

デジタル化の司令塔「デジタル戦略部」を設置

 FFGが、これら施策を矢継ぎ早に出している背景には、デジタルトランスフォーメーションを進めるための体制が整備されてきたことがある。2017年10月に設置されたデジタル戦略部である。

 これまでFFGのデジタル化は、営業戦略部を母体にするiBankマーケティングとFinTech領域でのベンチャー投資を担当する、ふくおかテクノロジーズパートナーズ(FTP)が先導。FTPは2017年4月に、FFGベンチャービジネスパートナーズとなり、投資枠を最大50億円、対象をFinTech外にも広げた。

 新設のデジタル戦略部は、iBankマーケティングとFFGベンチャービジネスパートナーズと連携しながら、FFGのデジタル化を推進する。その下に(1)サービスイノベーション推進室、(2)プロセスイノベーション推進室、(3)iBank事業室の3つの室を持つ。

 サービスイノベーション推進室は、スマホ決済やAIを使った新商品など新規事業/サービスの開発を、プロセスイノベーション推進室は銀行業務のプロセス開発を、iBank事業室はiBank事業の拡大を、それぞれ担う。

 福岡は行政もベンチャー支援などを含めデジタル化には積極的な姿勢を見せている。そうした地域にあって地方銀行のFFGの取り組みが、どのような成果を生みだし、銀行の新しい姿を形作るのかには注目したい。