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貿易関連書類のデータ入力の8割をブロックチェーンで削減、ビール大手含む欧州のコンソーシアムが実証

DIGITAL X 編集部
2018年5月2日

欧州のコンソーシアムが、貿易関連業務へのブロックチェーン技術の適用を実験し、関連書類への入力データを最大80%削減できることを確かめた。システム基盤を構築した米Accentureが2018年3月14日に発表している。

 実証実験を実施したのは、「バドワイザー」などのブランドを持つビール大手、ベルギーのAnheuser-Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)と、シンガポールの海運大手APL、スイスの物流大手Kuehne + Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル)、ヨーロッパ諸国の税関組織、そして米Accenture(アクセンチュア)からなるコンソーシアム(連合体)。

 実験の狙いは、国際物流業務において、現状の書類作成プロセスを見直しブロックチェーン技術を利用すれば、どれだけの業務効率化が図れるか、そして情報所有のあり方や説明責任、リスクが、どのように変化するかを確かめた。

 想定した場面は、Anheuser-Busch InBevの製品を、APLとKuehne + Nagelの物流網を使って、規制要件が異なる12カ所へコンテナ輸送すること。税関組織は、それぞれの関税規制に従って貨物を調査する。ブロックチェーンを利用したデータ管理基盤をAccentureが構築した。

図1:世界のコンテナ貨物の取引状況(図中数字は、2017年の取引額:米ドルと6年間の成長率、アクセンチュアのプレスリリースより)

 実験の結果、貿易関連書類に記載すべきデータの最大80%が入力不要になったうえ、輸送の過程でのデータ修正が容易になったとしている。貨物のチェック作業も効率が高まった。通関関連法令に違反するような貿易も減らせるため、企業は罰則を軽減できるとしている。

 国際貨物輸送では現状、輸出入に伴い20種類を超える書類が必要という。その多くは紙の書類に記録されている。ただ、書類全体を見渡すと重複して記録しているデータが最大で70%にも達する。書類作成作業は手間と時間がかかり、記載を誤ることも多い。取引関係者の全員がすぐに参照できないため、輸送した商品の支払いが遅れることもある。

 Accentureは今回の実証実験の結果を受けて、物流業務にブロックチェーンを適用すれば、入力や紙にかかわるコストを削減しながら、輸送過程を関係者全員がすぐに確認できる体制を構築できるとする。

 実験結果について、アンハイザー・ブッシュ・インベブで国際物流事業のバイスプレジデントを務めるダニーロ・フィゲイレド(Danillo Figueiredo)氏は、次のようにコメントしている。

 「当社は、新しい技術とイノベーションを絶えず評価することで、顧客ニーズに応え、新鮮なビールを提供できるオペレーションの整備に取り組んでいる。ブロックチェーンによって業務上のミスが減り、情報がデジタル化され、サプライチェーンのプロセスが改善されれば、当社は『顧客のために最高のビールを作る』という中核業務により集中できる」