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アジア太平洋地域の製造業はデジタル変革によりさらなる成長が可能も大企業のほうが舵取りは困難、Microsoftが調査

DIGITAL X 編集部
2018年5月14日

アジア太平洋地域の製造業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むことでGDPを2021年までに42兆円超、上積みできるーー。こんな調査結果を米Microsoftのアジア部門が示した。同調査では、大企業ほどDXへの舵取りが難しいことも浮かんが北。2018年5月7日に発表した。

 Microsoftのアジア部門が発表したのは、『Unlocking the Economic Impact of Digital Transformation in Asia Pacific(アジア太平洋地域のデジタルトランスフォーメーションの経済的影響を最大化する)』と題した調査報告書。調査会社のIDC Asia/Pacificに委託し、アジア太平洋地域の製造業者の経営層615人を調査した。

 同調査によると、アジア太平洋の製造業におけるGDP(国内総生産:Gross Domestic Product)は、2016年の約6兆1560億ドル(675兆9288億円。1ドル=約109.8円換算、以下同様)が、2021年には約8兆120億ドル(879兆7176億)にまでに成長する。年複利成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は5.4%である。

 さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進すれば、上乗せが可能で、2016年から2021年までのCAGRは1%上昇し、金額換算でおよそ約3870億ドル(42兆5000億円)増加する。この予想を織り込めば、2021年のアジア太平洋地域の製造業におけるGDPは約8兆3990億ドル(922兆2102億万円)になる(図1)。

図1:アジア太平洋地域の製造業のGDP。右側が2016年の調査結果で、左側が予測値

 製造業の業績に直接的に影響するDXの効果としては、生産性向上、利益率向上、コスト削減をトップ3に挙げる(図2)。長期的には、新製品/新サービスによる収益の向上、顧客サービスの改善への期待も高い。

図2:企業の業績に与える影響が大きなデジタルトランスフォーメーション(DX)の適用分野

 IDC Asia/PacificのバイスプレジデントであるVictor Lim氏は「製造業にとってDXへの取り組みは重要な課題だ。DXに取り組み始めている企業は2017年度に13~17%の改善をすでに達成済み。今後3年間では改善率は、少なくとも40%に達するだろう」としている。

 DXの推進に向け、アジア太平洋地域の製造業が重視しているのがデータ。回答者の44%が、資産としてのデータ活用がDXにおける重要なKPIになっていると回答(図3)。2018年度は、クラウド、ビッグデータ分析、AI(人工知能)、ロボット、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)への投資額を増やすとしている。

図3:DXを推進において重視する評価ポイント

 また今回の調査では、製造業を代表する企業と、他業種の代表的な企業におけるDXへの取り組み状況を比較している。結果、大企業のほうがDXに取り組むのが困難だとしている。

 その理由は、製造業を代表する企業ほど経営トップがDXの取り組みを統率することが多く、DX推進のための予算を通常予算とは別に獲得しにくいため。加えて、組織が強い縦割りになっていることが多く、速い変化に追従するのが難しいほか、組織を横断してDXに取り組んでも効果を得にくからとしている。