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広島県、AI/IoTの実証実験をうながす「ひろしまサンドボックス」に3年間で10億円を投資
広島県は、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などのデジタル技術を使った地域課題の解消に向けた実証実験に対し、3年間で約10億円を投資する。そのためのプロジェクト「ひろしまサンドボックス」を立ち上げた。都心部に多いベンチャー企業などの参画に向けては渋谷区とも連携する。2018年5月17日に発表した。
「都市部や山間地、農業から水産業まで、広島県には多種多様な環境がそろっている。ここで、これまでにない全く新しいソリューションを生み出してほしい」--。広島県知事の湯崎 英彦 氏は、デジタル分野に特化した実証実験プロジェクトである「ひろしまサンドボックス」への期待をこう語る(写真1)。サンドボックスは、「子供の”砂場(サンドボックス)”のように、何度でも試行錯誤できる場」(湯崎知事)という意味だ。
ひろしまサンドボックスは、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に焦点を当てた実証プラットフォーム事業。広島県が公募する案件に対し、コンソーシアムを組んでもらい、ソリューションを実証実験する(図2)。3年間で最大10億円を委託費用として用意する。コンソーシアムからの提案は、有識者などによる審査委員会を設け、審査する。実証に向けた規制緩和なども「国の施策と連携しながら取り組みたい」(湯崎知事)考えだ。
コンソーシアムの結成やコンソーシアム間での情報共有などを支援するために、「ひろしまサンドボックス推進協議会」も置いた。通信事業者などの「パートナー」やベンチャー企業などの「アドバイザ」、協賛企業や大学などをメンバーに、各種知見の提供や技術支援のほか、参加企業のマッチングなども手がける。
パートナーとなるのは、ソフトバンクとNTT西日本。ソフトバンクは2018年1月に、ひろしまサンドボックスと連携協定を締結している。同社の代副社長執行役員兼CTOの宮川 潤一 氏は、「テクノロジーを活用できる人材の育成が重要だ。当社は広島県を”ひとづくりNo.1”にするべく支援していきたい」とした。
一方のNTT西日本は2018年4月に連携協定を結んでいる。同社取締役 中国事業本部長の永野 浩介 氏は、「実証テーマは多数あるだけに、より積極的な自治体と組んでいきたい。関心が高まっている個人情報の取り扱いなども大きなテーマになる。NTTグループ全体の知見を活かしたい」と、ひろしまサンドボックスへの期待を話す。
また、ベンチャー企業の集積地の1つである渋谷区とも連携する。渋谷区は2018年4月に産官学民が連携する「渋谷未来デザイン(FDS)」を発足させている。FDSがひろしまサンドボックス推進協議会と連携し、ベンチャー企業の参画や、実証したソリューションの他地域展開などをうながしたい考えである。
パートナーなどが個別に運用するIoTプラットフォームをベースに、データ連携基盤の構築を目指す(図3)。各IoTプラットフォームが持つデータを仮想的に統合し、テーマごとにデータを抱え込むのではなく、相互に利用できるようにする。広島県が持つ「オープンデータIoTプラットフォーム」も連携対象になる。
ひろしまサンドボックスでは、まず第1次公募を2018年6月に実施し、7月にも採択し実証実験を始めたい考え(図4)。2018年9月に第2次公募を実施し同年10月に採択する予定、年度末に事業を評価し、次年度の方針などを決める。2019年度に第3次公募を実施するかどうかは検討中としている。
ただし、6月の第1次公募の課題などは発表時点では未定である。また、県内での実証実験に向けては、地元企業や有志など住民の参画や、デジタル化がもたらす影響あるいは個人情報を扱うことへの理解なども必要になってくる。こうした点について湯崎知事は、「それらの重要性は認識している。ただ、圏外からの就業者を含め若手の(デジタル化への)関心は高いので、そうした層からの動きを期待している」と話す。
その一環として人材面では、「社内IoTエキスパート育成事業」も展開する。広島県内の企業に勤める、経営企画部門や現場の責任者を対象に、IoTシステムへの投資計画を立案するための教育コンテンツを無償で提供する。教育コンテンツは座学に加え、技術指導やプロトタイプの作成、それらによる成果発表までカバーする。
広島県はこれまでに、デジタルイノベーション関連の取り組みとして、「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」と「ひろしまデジタルイノベーションセンター」を展開している。前者はイノベーションを創出するための企業交流拠点、後者は県内のマツダなど、ものづくり企業を中心に産学連携による人材育成やデジタル化を進める拠点だ。ひろしまサンドボックスでは、これらの拠点とも連携し、人材交流などをうながしたい考えである。