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CEOの7割はデジタル変革を自ら推進する準備ができている、スイスKPMG International調査

DIGITAL X 編集部
2018年6月4日

「世界のCEOの71%は、率先して抜本的なデジタル変革を推進する準備ができている」--。スイスの会計事務所KPMG Internationalが、こんな調査結果をまとめた。日本では同社日本法人が2018年5月23日に発表している。

 KPMG Internationalは今回、世界のCEO 1300人を対象にアンケート調査を実施した。主要11カ国(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、スペイン、英国、米国)の、11業界(投資運用、自動車、銀行、小売/消費材、エネルギー、インフラ、保険、ヘルスケア、製造、テクノロジー、通信)の企業が対象である。業務収入が5億ドル以上(550億円:1ドル=110円で換算。以下同様)で、3分の1は100億ドル(1兆1000億円)以上である。

 同調査によれば、世界のCEOは世界経済と自社が属する業界の成長見通しについて楽観的である。自国の成長については74%が、自社の成長見通しについては90%が「自信がある」と回答している。ただし、今後3年間に「人員を6%以上増やす」計画を持つCEOは37%で、55%のCEOは「今後3年間の売上成長率が2%未満」とするなど、慎重な姿勢もうかがえる。

 日本企業のCEOも傾向は同じで、8割以上が国内外の経済成長について自信を持ち、業界の成長見通しも明るいとするものの、自社の売上成長率については「2%未満」割弱が5割弱あった。

 AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、データ分析などのデジタル技術の活用に向けては、71%が「率先して抜本的な組織改革を推進する準備ができている」とする。顧客のデータ保護に対して「自身の重要な責任」と考えているCEOが59%あった。また62%が「AIの導入によって雇用は減少するが、それ以上に新しい雇用が発生する」と回答している。

 一方、日本のCEOに限れば、デジタル技術活用に向けて「抜本的な組織改革を率先して推進する準備ができている」とする回答は47%にとどまった。顧客のデータ保護が自身の重要な責任と考えているCEOも42%と世界のCEOより低かった。ただ、AIの導入による雇用の変化については、世界のCEOとほぼ同じ60%だった。

技術革新のスピードへの対応に苦慮する日本のCEO

 経営判断についての調査では、59%のCEOが「経営の機動性が企業の存続を左右し、対応が遅れると破綻する」と回答している。判断材料となるデータについては、51%が「過去のデータを分析した結果に比べて予測分析は正確と言えず、ソーシャルメディアのデータが最も信頼できる」とした。過去3年間に下した戦略的決定について、67%のCEOは「データに基づく洞察よりも、自身の洞察に頼ったことがある」としている。

 日本のCEOの回答では、「経営の機動性が企業の存続を左右する」という回答が84%に上り、世界のCEOより、機動性を重視している。信頼できる情報源については、ソーシャルメディアを挙げたCEOは60%、「政府が提供するオープンデータ」が68%、「旧来のメディア」も65%あった。

 「業界における技術革新のスピードへの対応に苦慮している」ということを認めるCEOが、世界では36%であるのに対し、日本は73%と大きく上回った。

 サイバーセキュリティについては、世界のCEOの49%Oが「いつ犠牲になるのか」という現実的な脅威だと認めている。そして55%のCEOは、「強固なサイバーセキュリティ戦略が協力企業との信頼関係を築き上げる上で重要だ」と回答している。ただしサイバー攻撃に対する準備が整っているとする回答は51%にとどまった。

 日本企業の場合、「強固なサイバーセキュリティ戦略が協力企業との関係構築で重要だ」とする回答が65%と世界より高い一方で。サイバー攻撃に対する準備が整っているという回答は33%だった。

日本企業は外部連携によるデータ活用を模索

 KPMG Internationalは、今回の調査結果から日本企業の特徴をまとめている。1つは、自社が必要とする経営の機動性を獲得するには第三者との提携強化が必要という回答が72%に上り、海外企業より19ポイントも高い。

 AIによって今後3年間に期待する効果」としては「経営の機動性の向上」(43%)、「利益成長の加速」(42%)、「データガバナンスの向上」(42%)を上位に挙げる。その成長計画を後押しするために重要な人材としては「データサイエンティスト」を上げる日本のCEOが74%あった。第2位の「新興市場の専門家」との間には大きな差があるという。

 目標達成のために今後3年間に予定している施策としては、日本のCEOの62%が「第三者のデータプロバイダーとの連携」を挙げる。自社だけでなく第三者が提供するデータも合わせて分析しようと考えている姿がうかがえる。