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デジタル変革は社長直轄の“第2のIT部門”とCDOが牽引、IDC Japanが調査

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年6月27日

デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進むなか、そのけん引役として従来のIT部門に代わる“第2のIT部門”やCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を社長直轄で置く企業が増えている−−。こんな調査結果を調査会社のIDC Japanがまとめ、2018年6月26日に発表した。

 今回の調査は、情報サービス業と官庁/地方自治体を除く日本企業のマネジャー職以上を対象にしたもの。グループ連結従業員数300人以上の企業に属する3789人のなかで、すでにデジタルトランスフォーメーション(以下、デジタル化)を実行している2290人のなかから早期に回答を寄せた558人にアンケート調査を実施している。

 同調査によれば、デジタル化の実施状況は、デジタル化を「実践」とする回答が52%を占め、「実験」中も18.8%あった。「検討」段階にあるのは29.2%にとどまり、IDC Japanは「日本企業のデジタル化は後半戦に突入した」としている。

 そのことを示す事実として、「社長/CEO(最高経営責任者)自らがビジョンを発信している」とする回答が64.2%もあった(図1)。そのうえで、実行は担当役員が牽引するスタイルが23.7%と最も多く、実行面でも自ら牽引するも17.9%に上る。

図1:社長/CEO自らがビジョンを発信する企業が増えている

 さらにCDO(最高デジタル責任者)を置く企業が48.9%と半数に迫る(図2)。ただし専任のCDOは3分の1以下で、CIOとの兼任あるいはCIO以外の役員との兼任が、それぞれ3分の1程度ある。

図2:CDO(最高デジタル責任者)を置く企業が増えている

 こうしたトップの意思を背景に、デジタル化を牽引するのが既存のIT部門とは別に置かれた“第2のIT部門”である(図3)。第2のIT部門とは、「デジタル化の目的のために設置した社長/CEO(最高経営責任者)やCDO(最高デジタル責任者)直轄の専任部門」または「デジタル化の目的のために設置した専任の子会社/関係会社」のこと。複数部門が関与するプロジェクト方式で推進するケースでは、組織横断プロジェクトチームや事業部門の参画度が高いが、中核組織としては、第2のIT部門の率が高くなる。

図3:デジタル化の中核組織としての“第2のIT部門”が増えている

 これらの企業において、「既存事業とは独立してデジタル化に取り組み、新たな事業の創出を目指している」という回答は、“第2のIT部門”を中核とする企業が31.4%なのに対し、従来のIT部門を中核とする企業では6.9%にとどまった。

 第2のIT部門の業務範囲は、「企業買収/ベンチャー投資」や「社外ステークホルダーとの連携(エコシステムの構築など)」「デジタル化の戦略立案」「戦略に基づく製品/サービスや社内の業務プロセス変革の企画」などが挙がる(図4)。

図4:“第2のIT部門”の業務範囲

 そこでのPKI(重要業績評価指標)としては、「協業や連携企業数」「新事業の構築数」「新事業の売上高/売上比率」が上位の目標になっている(図5)。これに対し従来のIT部門のKPIとしては「業務の効率化」や「リードタイム」を重要視しする傾向が強い。

図5:“第2のIT部門”のKPI(重要業績評価指標)

 デジタル化への取り組みの成果としては、「事業部門のデジタル化への関心を高めている」と「トップとの距離が近くリーダーシップを発揮している」と挙げる声が強い(図6)。一方で、「社外からも多様な人材を集めている」と「デジタル化の進ちょくを評価するKPIを作っている」については課題があるとする声が強く、人材採用面で苦労しているのが実状のようだ。

図6:デジタル化の取り組み成果と課題

 今回の調査結果について、IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの國土 順一 氏は、「第2のIT部門は、試行段階における一形態だろう。今後、デジタル化がさらに進めば、事業部門自身がデジタル化を推進するデジタルネイティブな組織に変わるか、デジタルを前提に事業を推進する新しい事業部門が誕生するだろう」と予測している(図7)。

図7:“第2のIT部門”の将来像