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デジタルトランスフォーメーションに必要な能力持つ企業が減少、仏Capgeminiが調査
「デジタルトランスフォーメーション(DX)に必要な能力が備わっている」とする企業が6年前より減少しているという調査結果をフランスのコンサルティング会社Capgeminiが公表した。DXに向けたリーダーシップを発揮できる人材が欠如し、経営層は変革の方向を示し切れていないとする。同社日本法人が2018年7月4日に発表した。
仏Capgeminiが調査したのは、世界757社の部門長以上の役職にある1338人で、対象の71%は2017年度の収益が10億ドル(1110億円:1ドル=111円で換算)以上の企業に所属している。その結果を、2012年にCapgemini Consultingと米マサチューセッツ工科大学(MIT)が共同でまとめたレポート『MIT Center for Digital Business』と比較した。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するに当たり、「リーダーシップ能力が備わっている」とする回答は、6年前は45%だったものが今回は35%に減少した(図1)。また「必要なデジタル能力が自社に備わっている」とする回答は、6年前と同じ39%で半数に届かなかった。
デジタル能力に関しては、企業はカスタマーエクスペリエンス(CX)を優先させている。具体的には、携帯電話などのモバイルチャネルでの製品/サービスの販売は、2012年の23%が43%にまで増えた。製品に組み込んだデバイスから市場や顧客に関する知見を得ている企業も、2012年の17%が40%近くにまで増えている。
ただ、こうした流れについてCapgeminiは、スマートフォンなどの携帯機器の普及や、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術が進化していることを考えれば「驚くことではない」とする。
一方、製品の開発や設計などにおけるデジタル化は停滞気味である。「自社製品をデジタルで設計している」とする企業は2012年の38%から40%へ微増したものの、設計/生産状況を「リアルタイムで監視している」とする企業は35%で、2012年の48%から減少した。
従業員が期待するツールや能力の提供も進んでいない。「従業員同士のデジタル的コラボレーションが可能」とする企業は、2012年の70%が38%に、「デジタル技術がシニアエグゼクティブと従業員との間のコミュニケーションを改善する」ことに同意する企業も前回の62%が33%に、それぞれ減少した。2012年当時よりも、コラボレーションに対する認識や、それを支えるツールへの期待が高まりハードルを上げているとも言えそうだ。
CIO(Chief Information Officer)と他の経営陣の間の意識の違いも大きくなってしまっている。CIOと他の経営陣が「自社組織におけるITの役割について共通の認識を持っている」という回答は2012年の65%が37%に減少。両者が「企業としての生産性を上げるためにITをどのように活用するかという点について共通の認識を持っている」という回答も2012年の59%から35%に下落した。「IT投資の優先順位について共通の認識を持っている」とする回答も2012年の53%が36%にまで低下した。
この現象についてCapgeminiは、「業務の最適化が縦割り組織の中でしか実現されていないか、事業部門がIT部門の動きの遅さに苛立ちを感じシャドーITを形成しつつあることを示唆している」と分析している。
企業文化の側面でも良い結果は出ていない。「働く誰でも自社のDXに関する会話に参加する可能性がある」という回答は2012年の49%が36%に低下した。「既存の従業員に対するデジタル技能を再教育する正式なプログラムが存在する」とする企業は38%、「シニアエグゼクティブとマネジャーがDXに対する共通のビジョンをもっている」と考える企業は36%にとどまった。
CapgeminiのDigital Service Headを務めるCyril Garcia氏は、今回の調査結果について次のように述べている。
「2018年の技術のあり方は、2012年よりはるかに複雑だ。AIや機械学習、自動化、IoTなどの新技術は、かつてない機会を企業に提供している。しかし、成功に不可欠なのは、これらの技術を企業に適応させ、企業に組み込む能力である。新しい技術を最大限活用するためには、ビジネスリーダーが新しい技術に投資するだけではなく、従業員とともにDXのアジェンダを、技術の理解と同じくらい変更管理に重点を置きながら、進めていくことが不可欠だ」