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アニーリングマシンによる組み合せ最適化問題特化の計算サービス、NEDOと日立が無償公開

DIGITAL X 編集部
2018年10月4日

「組み合わせ最適化問題」に特化した計算サービスを新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所が無償公開した。「CMOSアニーリングマシン」という新しいコンピューターを使っている。2018年9月19日に発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所が無償公開したのは「Annealing Cloud Web」というサービス。膨大な選択肢から最適な組み合わせを見つけ出す「組み合わせ最適化問題」を解く計算サービスだ(図1)。

図1:「Annealing Cloud Web」のデモアプリ。元画像(左)にノイズをかけて(中)、組合わせ最適化問題の手法でノイズを除去して元画像を極力再現する(右)

 組合わせ最適化問題の典型例に「巡回セールスマン問題」がある。セールスマンが複数の都市を1回ずつ訪問しながら最初の都市に戻る際に、どの順番で巡れば移動距離を最短にできるかという問題だ。訪問する都市の数が増えると計算量が指数関数的に増加するため、現実的な時間では解けなくなる。

 Annealing Cloud Webでは、日立が開発した「CMOSアニーリングマシン」を活用することで、計算時間を短縮している。アニーリングマシンは、磁性体の性質を説明するために考案された「イジングモデル」を利用し、組み合わせ最適化問題を効率良く解ける新種のコンピューター。日立のCMOSアニーリングマシンは、イジングモデルの動作をCMOS半導体で擬似的に再現している。

 今回、サービスを無償公開したのは、アニーリングマシンの普及を促し、活用例を増やしたいため。今後は、アニーリングマシンの普及と関連技術者の早期育成を目指す。同時に、Annealing Cloud Webを利用者がどのように使っているのかを調べることで、課題を洗い出し、今後のさらなる研究開発に役立てるとしている。

 日立としては2015年2月、2万480のパラメータに対応した専用チップの試作に成功し、2016年11月にはFPGA(Field Programmable Gate Array)を利用して計算規模を拡大する技術を開発。2018年6月には複数のFPGAを接続して計算性能を拡張させる技術を開発するなど、アニーリングマシンの開発に取り組んできた。今回のサービスで利用するCMOSアニーリングマシンは、新開発のプロセサだとしている。

 なおCMOSアニーリングマシンの開発には、産業技術総合研究所、理化学研究所、情報・システム研究機構、早稲田大学との共同研究の成果を生かしている。