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設計時のシミュレーション回数を削減できるAI技術、富士通と富士通研究所が開発

DIGITAL X 編集部
2018年10月10日

製造業における設計業務において、計算時間がかかるシミュレーション回数を削減するためのAI(人工知能)技術を富士通と富士通研究所が開発した。2018年9月19日に発表した。

 富士通と富士通研究所が開発したのは、設計データからシミュレーション結果を予測するAI(人工知能)。予測結果から、設計候補を絞り込み、実際にシミュレーションを実施する回数を削減する。シミュレーションは計算量が多く時間がかかるため、シミュレーション回数を減らせれば、設計業務の効率を高められる(図1)。

図1:設計データからシミュレーション結果をAIで予測することで、実際にシミュレーションする対象を絞り込む

 シミュレーション回数を減らす策として、シミュレーション対象の設計データと、その結果をAIに学習させ、設計データを評価する手法がある。ただ着目点が、設計データの部分的な特徴であり、全体の形状が評価に大きく影響する製造業の設計業務においては、十分な精度を得るのが難しかった。

 そこで富士通と富士通研究所は今回、設計データに物理法則を適用した近似モデルから得た推定値を学習データとして利用するようにした。これを、正解データとしての実際のシミュレーション結果とともに学習することで、全体形状を対象にしたシミュレーション結果を高い精度で予測できるようにした。

 そこでは、別に開発した学習データの不足を補う技術「Wide Learning」も利用している(関連記事参照)。

 今回開発した技術を回路設計の工程に試用してみた。回路から10m離れた場所の電磁波強度を推定する実験で、一般的な深層学習の手法で672件のデータで学習した場合、推定結果の誤差が±16%であるのに対し、新発技術の推定結果の誤差は±2.9%だった。この結果から、設計候補の絞り込みにシミュレーションの代替として活用できるめどが立ったとしている。

 富士通は、今回開発した技術を、電磁波解析ソフトウェア「FUJITSU Technical Computing Solution Poynting」の追加機能として2019年度中に実用化する予定にしている。