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「情報製造小売業」を目指すファーストリテイリング、Googleやダイフクなど協業拡大に動く

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)/DIGITAL X 編集部
2018年10月12日

「ユニクロ」や「GU」などの衣料ブランドを展開するファーストリテイリングが、「情報製造小売業」への転換を加速するために、協業戦略を強化している。2018年9月に米Googleとの提携を発表。それに前後して、自動編み機の島精機製作所、物流関連機器のダイフクと戦略的パートナーシップの締結を発表した。データを軸に、新たな対顧客サービスを創出するのが目標だ。

 ファーストリテイリングが目指す「情報製造小売業」とは、「顧客を深く理解し、顧客が求めるものだけを作り、最適な形で届ける」というもの。その実現に向けて、社内のすべての仕組みを見直し、働き方を根底から変えていくという。

 米Googleとの提携では、Google CloudのASL(Advanced Solutions Lab)チームと協業し、ASLが開発した機械学習や画像認識技術を、商品トレンドや需要予測に活用する。顧客ニーズだけでなく、顧客の行動や販売実績データ、外部データなどを組み合わせて機械学習で分析することで、顧客をより深く理解するという。ASLとの提携した日本企業は、ファーストリテイリングが初めだという。

 また、全社員のコミュニケーション基盤としてGoogleの「GSuite」を導入する。顧客が求める商品をち早く製品化して提供するには、本部から店舗、生産・物流拠点で働く全社員が、同じ情報を見て完全に連動して働く必要があるためだとしている。Googleとは今後、より広い分野で協業を進める計画だ。

 生産分野で戦略的パートナーシップを結んだのは、自動編み機などを製造する島精機製作所。これまでも協業関係にあったが、それを強化し、中長期的に包括的なニット商品の開発と技術革新への取り組みを加速するとして2018年7月に発表した。

 両社は2016年10月に、合弁会社イノベーションファクトリーを設立し、ホールガーメント商品の量産技術を蓄積してきた。ホールガーメントとは、一着まるごとを立体的に編み上げる手法である。店頭では「3D KNIT」として展開し、一部サイズのオーダーにも対応している。

 今後は、ホールガーメント製品をアジア一円での生産体制を確立するとともに、オンデマンド型での量産を視野に、顧客と工場を直結した新しい商品と量産プロセスの開発を目指すとしている。

 一方、物流分野では2018年10月、ダイフクとの戦略的パートナーシップを発表した。東京・有明の「有明倉庫」の自動化を実現したのを皮切りに、継続的かつ安定したグローバルな物流機能の提供を目指す(図1)。

図1:ファーストリテイリングが東京・有明の「有明倉庫」に導入した最新の物流関連機器

 グループの物流拠点に、最新鋭かつ一気通貫型の自動化設備の導入していくに当たり、両社スタッフによる特別チームを編成し、導入を推進すると同時に、必要になる新たな物流システムも協働で開発していくという。

 これらの提携に共通するのは“情報”あるいは”データ”である。オンデマンド型商品の開発を挙げるように、顧客の発注データや体型データなどを起点に、商品を生産し、送り届けるまで、あるいは不要品の回収/破棄までが視野に入っていると考えられる。体型データを使ったオーダースーツといったサービスを開始したZOZO(旧スタート・トゥデイ)なども同様のシナリオを描いているのではないだろうか。

 アパレル業界では、ネットビジネスやデータ活用によるオンデマンド化など進みはじめた。それを実現するためのAI(人工知能)などデジタルテクノロジーの開発競争および人材獲得も激しくなっている。ファーストリテイリングが「情報製造小売業」を掲げるように、SPA(製造小売)の競争軸は”情報“、すなわちデジタル化に完全にシフトしてきている。