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世界のスマートシティ関連支出は2019年に958億ドルに
スマートシティへの取り組みがアジア太平洋地域の中規模の都市で急速に広がり、大都市に刺激を与えている--。米調査会社のIDCは、こう分析する。日本国内でも60%以上の企業/官公庁がスマートシティに取り組んでいる。同社の日本法人が世界動向を2019年2月14日に、国内動向は同18日に、それぞれ発表した。
米IDCの調査によれば、スマートシティに関する全世界の支出額は、2019年に前年比17.7%増の958億ドルに達する見通しだ。シンガポール、米ニューヨーク、東京、英ロンドンは2019年に、スマートシティ計画にそれぞれ10億ドル以上を投資する予定である。
同社Customer Insights & Analysis Group プログラムマネージャーのセレナ・ダ・ロル氏は「大規模な統合プロジェクトの予算を確保している都市は少ない。一方で、特定の問題に集中的に取り組んでいる、または小規模ながら部門間にまたがる変革を模索している都市が多い」と指摘する。
対象分野としては、データ駆動型の公共安全や、高度な交通制御、耐障害性の高いエネルギーとインフラ、経済発展と市民参画、持続可能な計画と管理などに多くの投資が見込まれる。
2019年に最も多くの投資が見込まれるのは、固定型の監視画像データの解析、公共交通の誘導、スマート街灯、交通管制、バックオフィスの5つ。合計で世界支出の34%を占める。交通管制は2020年にはスマート街灯を抜くとみられる。
2017年から2022年の間に支出が最も急速に伸びるとみられるのは、警察官装備。それにデジタルツイン(製造業などで物理的な環境をデジタル環境に再現すること)や、車両をネットワークにつなぐV2X(Vehicle-to-Everything)が続く。
地域別にみると、アジア太平洋地域が世界全体の支出の40%以上を占める。南北アメリカは全体の3分の1前後、欧州/中東/アフリカは4分の1前後になる。2019年にスマートシティ計画に3億ドル以上を投じると予測される都市は、米国ではニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンD.C.、シカゴの4都市だが、中国では11の都市が対象になる。
「アジア太平洋地域では、中規模の都市におけるスマートシティ化の急速な広がりが、多くの大都市の変革に刺激を与え続けている」と、IDCアジアパシフィックPublic Sector Researchのジェラルド・ワン氏はコメントしている。
IDC日本法人が調査した日本国内の動きでは、スマートシティ関連のIT市場の規模は2018年に4623億円。2018年から2022年までの年間平均成長率は21.2%で、2022年には9964億円になると予測する。
分野別では、2018年の支出額の上位は、高度化した公共交通誘導、インテリジェント交通管制、環境監視、固定監視画像データ解析、スマート街灯の順で、2022年も同様になる見通しだ(図1)。
国内の554の企業/官公庁を対象に2018年11月に実施したアンケート調査では、60%以上がスマートシティへの取り組みに向けた企画を開始、もしくは実際にプロジェクトを実行していた。関連のIT予算も2020年に向けて増加傾向にある。
一方で課題としては、実証実験から実ビジネスにつなげていく先導モデルの必要性や、コスト削減や市内総生産向上などの効果を測定するための新たなKPIの設定、異業種連携や官民連携を推進するための人材不足などが挙がっている。