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商用車の交通事故をIoT/AIで削減するサービスをDeNAが開始、実証では最大48%削減

DIGITAL X 編集部
2019年6月7日

商用車の交通事故をIoT(Internet of Things:モノのインターネット)とAI(人工知能)を使って削減するサービスをDeNA(ディー・エヌ・エー)が2019年6月4日から提供している。実証実験では最大48%の削減効果が得られたという。収集したビッグデータを使った交通環境の改善も目指す。2019年6月4日に発表した。

 DeNA(ディー・エヌ・エー)の「DRIVE CHART」は、タクシーやトラックなど商用車を対象にした交通事故の削減支援サービス。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とAI(人工知能)を使ってクルマの運転状況を可視化し、地図情報などと組み合わせることで、習慣化された危険な運転行動やドライバーの状態に潜むリスクなどを検出し、ドライバーの改善をうながす(図1)。

図1:「DRIVE CHART」が導き出せる潜在的な危険の例

 サービス化に先立ち、京王自動車、日立物流、首都圏物流などの協力のもと2018年4月から10月にかけて実証実験を実施した。結果、過去5年の同時期の平均と比べ、事故率がタクシーで約25%、トラックは約48%改善した(図2)。車両の修繕費でも効果が現れたほか、事故を起こした場合でも規模の縮小が確認できたとしている。

図2:実証実験における効果測定結果

 改善指導の基になる運転状況などは、専用車載器が持つ加速度センサーやGPS(全地球測位システム)から収集する。加えて車内外を撮影したカメラ映像をAI(人工知能)により画像認識し、車載器内でリアルタイムに解析する(表1)。専用車載器はJVCケンウッドと共同開発した。

表1:「DRIVE CHART」が運転状況を把握するために用いるデバイスと収集データ、および検知できる危険シーン
デバイス収集するデータ検知する危険シーン
加速度センサー/GPS・走行時間/距離/速度・急加速/急ブレーキ・急ハンドル・GPS位置情報・衝撃・衝突回避(急ブレーキ/急ハンドル)
外向きカメラ+AI画像解析・前方車両・二輪車・歩行者・車線・車間距離・一時不停止・制限速度超過(低速路含む)・車間距離不足
内向きカメラ+AI画像解析・ドライバーの顔向き・眼の開度・脇見・居眠り(※今後追加予定)

 ドライバー個々の運転特性は、本人と管理者が共有し改善に取り組む。ドライバーは、検出された危険シーンと場所を動画で振り返ることができる。スコアが表示されるため、目標を定めた改善の推移を確認することで当事者意識の維持が期待できる。

 安全管理者は、各ドライバーの目標達成度合いや指導すべき運転状況を客観的に把握でき、有効なコミュニケーションを取れるようになる(図3)。DRIVE CHARTでは、ドライバー/安全管理者に対し、外部の専門家を含めたサポートチームから運用改善のためのアドバイスも提供する。

図3:客観的な運転状況データを基にドライバーに改善をうながしていく

 事業会社の経営者は、各拠点での目標設定や取り組み状況、運転行動の改善傾向などを把握できる。チームで成績を競うなど、業務に即したフォローアップ施策を講じることで、安全管理者と目標を共有しての改善に取り組めるという。

 DeNAでは、クルマの運行状況データを使って、道路の保全や道路管理、防犯・防災といった交通環境の改善も目指す。自治体や警察などのステークホルダーと連携しながらDRIVE CHARTで収集したデータから個人情報に留意した上で交通環境ビッグデータを作成する(表2)。

表2:DRIVE CHARTで得たデータから生成する交通環境ビッグデータの活用例
映像等で検知する物体・状態等データの活用例
・舗装(Gセンサー)、路面標示の劣化箇所の検知①道路の保全:道路の劣化状況等の把握
・植栽の道路へのはみ出し量の検知
・ゴミ、落下物の検知②道路管理:路上障害物等の検出
・(違法)駐車車両・駐輪車両等の検知
・自動車、自転車、歩行者の検知③防犯:不審者・不審車両の検知
・ヒヤリハット事象の検知④交通安全:ヒヤリハット箇所の抽出、原因の特定
・ヒヤリハット原因の判別
・渋滞、混雑状況の判別⑤交通円滑化:渋滞箇所・渋滞要因の把握
・混雑要因となる事象の検知(路上駐車車両、交差点部の車線別の停止車両)
・標識、安全施設、車道幅員、沿道出入りの状況、路上駐車の状況の検知⑤交通円滑化:道路の走りやすさの評価
・自動車(対向車)、自転車、歩行者の検知⑥道路の利用実態:交通量の把握(新たな調査手法)
・降雪時のスタック、冠水等の交通障害を検知⑦防災:交通障害の把握

 交通環境ビッグデータは、自動運転車両などが必要とする道路情報や交通環境情報、乗降地などの選定にも利用する。これらの取り組みは、神奈川県の道路管理分野や横浜市の「I・TOP横浜」との連携を想定している。