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顧客接点で発生する音声情報などを利用可能にするAPI、米Twilioが日本法人設立し日本語対応を強化

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年9月5日

メールやチャットなど顧客との対話ツールが多様化するなかで、電話によるやり取りは今も重要な対話手段として外せない。さまざまな対話機能を各種システムから利用するためのAPIを提供する米Twilioが2019年8月30日、日本法人を設立し日本市場での活動を本格化した。音声などをどのように利用可能にするというのか。

 Twilioは米サンフランシスコで2006年に創業したAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)提供企業。当初は携帯電話の音声やSMS(ショートメッセージ)のデータを他のプログラムに接続するAPI専業としてスタート。現在は音声のほか、チャットやビデオ、メールなどのAPIを「クラウドコミュニケーションプラットフォーム」と呼んで提供している(図1)。

図1:Twilioが提供する「クラウドコミュニーションプラットフォーム」の位置づけ

 クラウドコミュニケーションプラットフォームとは、どのようなもので、企業はどう使うのか。Twilioが提供するのは、電話接続や番号の提示、チャットやメールなどを企業の情報システムにつなぎこむためのAPIインタフェースである。顧客接点が多様化するなかで、音声チャネルを外せないサービス業を中心に注目されている。

 音声活用の一例として挙げるのが、営業ツールと音声の組み合わせ。外出先から携帯電話を使って顧客に直接電話をかけるケースが増えているが、携帯の番号でなく会社の固定電話の番号から発信しているように見せたい企業が増えているという。そのほうが顧客が安心するからだ。

 金融機関などでは、社員が顧客に商品を正しく説明しているかを確認するために、通話音声を録音し保管することもできる。コンプライアンスの面で「言った言わない」を許さない仕組みを作りたい企業ニーズにも対応する。

 ユニークなところでは、福岡市が2014年から開始している、PM2.5の予測値の公開システムがある。同システムでは、Webサイトのほか、専用の番号に電話すると、その日のPM2.5の飛散予測値を音声で教えてくれる。このサービスにTwilioのAPIが利用されている。

 また米ライドシェア大手のUber Technologiesは、サービス開始当初から配車システムにTwilioを採用している。同社サービスでは、車両が到着するまでの時間がスマホにリアルタイムで表示されるが、インターネット経由では遅延が発生する。そこでTwilioのショートメッセージのAPIを組み入れることで、遅延を抑えているという。

直販やパートナー支援とともに日本語対応を急ぐ

 TwiLioのサービスはこれまで、KDDIウェブコミュニケーションズ(KWC)が2013年から国内独占販売代理店として提供されてきた。今回、Twilio本社が日本を最重要マーケットに位置付け日本法人を設立した。Twilio日本法人の初代社長に就任した今野 芳弘 氏は、「直販体制の構築とSIパートナーの支援と同時に、製品/サービスの日本語対応を急ピッチで進める」と強調した(写真1)。

写真1:Twilio Japan設立記者における首脳陣。左からTwilio Japan合同会社の代表執行役社長に就任した今野 芳弘 氏、TwilioのAPACおよび日本地域ヴァイス・プレジデントのアンジー・ベル(Angie bell)氏、KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役社長の山崎 雅人 氏

 APIの単体売りだけでなく、コミュニケーションインタフェースを束ねたサービスとしての提供も開始する。その1つが、コールセンター向けの「Twilio Flex」。コールセンターのフロント機能を提供し、CRM(顧客関係管理)システムなどとの連携を可能にする。「特定のキャンペーン専用コールセンターや選挙事務所における支援者獲得など、期間限定の用途にも使いやすい」(今野社長)という。

 KWCは今後、Twilio日本法人のリセラーの1社、ゴールドパートナーとして引き続きTwilioを販売/サポートする。KWCの山崎 雅人 代表取締役社長は、「6年間でTwilioの取り扱いが拡大し、大手企業の顧客も増え、当社だけでは手一杯の状況になっていた。日本法人設立によって当社の役割も明確になる。これまでの経験を生かし顧客サービスに専念する」と話す。顧客名には、リクルートライフスタイルやヤフーなどが挙がる。

 個人同士の会話は、LINEなどのチャットツールが広がっている。しかし、そこにも音声通話機能が組み入れられているし、企業間や企業と個人の間では今も電話が多用されている。顧客との対話チャネルとしてだけでなく、音声データを分析しビジネスに生かそうという取り組みも拡大してきている。

 音声のビジネス利用における世界的な実績を持つTwilio。日本法人設立で直販にも乗り出すことで、どのような音声活用が見られるのか注目だ。