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日本企業はチームの可能性を解き放てるか
ソフトウェア開発用途から企業改革用途で伸びる豪アトラシアン
日本では“竹を曲げる”ような時間が必要
グローバルで顧客数を伸ばすアトラシアンにあって、現地法人があるのは日本だけだ。日本法人は7年前に横浜に設立され、今は20人の社員が日本での販売・サポートに当たっている。国の代表という役職は、日本法人のスチュアート・ハリントン代表取締役社長だけというわけだ。
日本にだけ現地法人がある理由の1つは言葉の壁。市場のポテンシャルは高いものの「日本語対応が求められ導入が難しい国だ」(ハリントン氏)からだ。他の国や地域は、すべて英語対応のみであるのに対し、日本では、マーケティング、Webサイト、製品サポートのすべてで日本語対応している。
もう1つの理由が企業文化の壁だ。ハリントン氏は「日本での取り組みに対して本社から『時間がかかりすぎる』と指摘されることもある」と明かす。だが「日本の組織は“竹”のようなもの。急に曲げると割れてしまうが、時間をかけ、ゆっくり力を加えれば、どのような形にも変えられる。変革には時間がかかると説明している」(ハリントン氏)。
こうした“特別扱い”も寄与して、日本法人の売上高は30倍以上に伸び、導入社数も数千に達しているという。ANA(全日本空輸)やLINE、日産などが顧客になっている。ハリントン氏は「チャットツールや、事務的作業の進捗管理、あるいはプログラムの開発管理など、特定業務に特化したソフトウエアは他にも存在する。だが、プロジェクトの構想段階の議論から開発、販売、運用までのライフサイクル全体をシームレスに管理し共有できるツールは当社製品しかないことの認知が広がってきた」とする。
ただ今後さらに市場を拡大するためには、企業変革に積極的な企業だけでなく、保守的な組織や働き方に切り込んでいかねばならない。少子高齢化や働き手不足が進むとはいえ、国内に一定規模の市場が存在する業界は少なくない。そこに安住している企業は「今日明日にでも働き方を“がらっと”変えなければ生き残れない」という認識はまだ薄い。
この点についてハリントン氏は、「日本企業の生産性の低さが問題になっているが、日本はもともと“カイゼン”などチームカルチャーが強い国のはずだ。当社製品を使えば組織に存在する縦・横の壁を取り払える。課題は多いのは事実だが、成功事例も増えてきている。日本企業も変わらなければならないという危機感を伝え、変革を支援していく」と語る。
ハリントン氏は幼少期から日本で育ち、国内の大学でAI(人工知能)を研究した経験も持つ。日本の企業文化にも知見を持つハリントン氏が率いる日本チームが、竹を曲げる粘り強さで日本の働き方を変える挑戦は続く。