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日本企業はチームの可能性を解き放てるか

ソフトウェア開発用途から企業改革用途で伸びる豪アトラシアン

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年2月21日

プロジェクトの進捗管理のためのソフトウェアを開発・販売する豪アトラシアンが世界でユーザー数を拡大している。ソフトウェアのアジャイル(俊敏な)開発のためのツールの提供からスタートした同社だが、近年はチームの情報共有など組織の改革ツールとしての利用が広がっているという。プライベートイベントのために来日したCEOのジェイ・サイモンズ氏らが、組織改革に取り組む企業の現状などを説明した。

写真1:豪アトラシアンCEOのジェイ・サイモンズ氏

 アトラシアンは2002年、シドニーで2人の大学生が起業したソフトウェア開発会社。プログラマーがコードを書くためのツールの開発からスタートした。最近ではソフトウェア開発用途だけでなく、企業がアジャイルな手法を用いてプロジェクトを推進するためのツールとしての導入例が増えているという。

従業員5万人の銀行がアジャイル改革に向けて全社導入

 ANZ銀行(オーストラリア・ニュージーランド銀行)は、アトラシアン製品を使って業務のデジタル変革を実現した企業の1社。創業100年を超えるANZ銀行では、2016年に就任した新CEOが「我々は105歳ではなく、5歳のつもりで新しい挑戦をはじめる」と宣言。トップダウンの意思決定だった社風をボトムアップに変更した。

 アトラシアンのコラボレーションツールを全社に導入し、すべての社員が製品の研修を受け、コラボレーション環境を利用できるようにした。これにより、社内のプロジェクトがどう進行しているのか、どんなやり取りが社員間で交わされているのかを社員全員が参照できるようになり「社員1人ひとりにオーナー意識を持たせることに成功した」(アトラシアンのサイモンズCEO)という。

 同時に、サービスの企画から提供開始までに1年以上を要していた開発業務にもアジャイル手法を採り入れ、新サービスを素早く市場導入できる形に一新した。サイモンズ氏は「従業員5万人のANZ銀行は、CEOの手腕とアトラシアンの機能により、新しいサービスを次々と世に出すことに成功している」と話す。

強いチームを作るためのノウハウも用意

 ANZ銀行同様の取り組みが、デンマークのレゴや独アウディ、米ドミノピザなどでも起こっているとする。フォーチュン500社の83%がアトラシアン製品を導入するほか、業種を問わず世界190カ国に15万のユーザーを抱える。ジェイ・サイモンズCEOは自社の強みをこう語る。

 「『あらゆるチームの可能性を解き放つ』というミッションのもと、組織の生産性を向上させるツールを開発してきた。当社の成長理由は、各種ツールが優れているだけでなく、ツールを生かし切って強いチームを作るためのノウハウと手厚いサポートを利用企業に提供できていることが大きい」

 アトラシアンが現在提供しているソフトウェアは、プロジェクトごとにメンバーが参加する掲示板のような機能を持つ「Jira Software」、コラボレーション環境を作る「Confluence」、ソフトウェア開発の基盤になる「Bitbucket」、タスク管理アプリ「Trello」など15製品がある。これらを連携させ情報を部門を超えて共有できるのが特徴だ。

 たとえば、企業のプロジェクトチームであれば、初期の企画検討の議論から、プログラムの開発過程、完成したサービスの運用まで、各段階の情報をつながった形でメンバーが把握できる。プログラマーが「そもそも、この機能は何のために作っているのか」を知りたくなったら、オンラインの情報をたどって企画段階の議論を改めて確認できる。サイモンズCEOは「疑問が早期に解消するためチームの一体感が高まり、仕事に対するモチベーションも向上する」とする。