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個人情報の行政機関との共有は公共サービスの向上が前提、米アクセンチュア調査

DIGITAL X 編集部
2020年4月27日

「公共サービスがパーソナライズ化されるなら個人情報を行政機関との共有には前向き」――。こんな考えを世界の人々が持っていることが米アクセンチュアの調査で分かった。AI(人工知能)を活用した仮想エージェントの利用に賛同する市民も多かった。同社日本法人が2020年3月16日に発表した。

 今回の調査は、米アクセンチュアが2019年9月と10月に、日米英独仏など11カ国において18歳以上の市民6501人を対象に実施したもの。

 同調査によれば、「よりパーソナライズされた公共サービスが得られるならば、行政機関に対して個人情報を共有しても構わない」との回答が世界では84%だった。ノルウェーとフィンランドが88%で最も高く、米国と日本も79%あった(図1の上)。

図1:公共サービスのパーソナライズ化への期待は高いが、複数の行政機関との個人情報の共有を認める声は低い

 ただ「公共サービスが向上するのであれば、複数の行政機関と個人情報を共有してもよい」との回答は41%にとどまった。最も高かったフィンランドで56%、日本は20%しかなかった(図1の下)。

 この1年間に行政機関の対応が「満足する水準だった」の回答は41%。満足の割合が最も高いのはシンガポールの54%。日本は20%で最低だった。「行政サービス改善に向けたフィードバックをどのように共有すればよいか分からない」との回答も58%ある。日本は83%と特に高い。

 行政サービスや公共サービスに期待する点としては、「問い合わせに対する迅速な対応」が73%(日本は63%)のほか、「窓口担当者に対する知識の豊富さ」が66%、「親しみやすい対応」が55%を求める声が多い。日本はそれぞれ73%、日本67%と、より窓口担当者への期待が高かった。

日本は仮想エージェントへの期待が高い

 AI(人工知能)を搭載したサービスアシスタントやチャットボットなどの“仮想エージェント”を使った公共サービスについては、78%が利点を理解していた。ただし、「仮想エージェントによる手続きの完了」を望むのは47%、「仮想エージェントの活用で最も早く回答が得られる」と考えているのは50%である。

 日本は、利点の理解が55%と世界より低いものの、手続きの完了の希望は64%、回答が最も早いとしたのは62%と仮想エージェントへの期待は高い。

 期待内容としては、「公共サービスを24時間いつでも受けられるようになる」ことが49%(日本は48%)あった。41%(日本は47%)は「仮想エージェントの利用により、行政機関での待ち時間が減るだろう」と答えている。

 ただし、行政機関とのやり取りに仮想エージェントを利用したことがあるとの回答は16%と低い。最も高いのはフィンランドの33%、最も低いのが日本の4%である。

 「自分のニーズを仮想エージェントが効果的に満たしてくれた」との回答は44%で、「その際の利用体験に満足している」との回答者も41%だった。日本はそれぞれ28%と20%にとどまる。利用体験の満足度が高いのはオーストラリアの59%だった。

 今回の調査を主導したアクセンチュアのマネジング・ディレクターであるEyal Darmon氏は、結果についてこうコメントしている。

 「各国政府が講じてきた個人情報保護策は、データ活用による市民サービスの向上を妨げる可能性もある。行政機関全体を巻き込んだ新たなデータ共有制度を希望者が利用できるようにすることが一つの改革となるだろう。市民の期待が高い仮想エージェントを利用し、市民へのサービスの拡幅と体験向上に努めるべきだ」