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データ活用に取り組むも人材の専任化・正社員化は3割強が「効果なし」、NTTデータ経営研究所が調査
「市場拡大に向けたデータ分析への取り組みが広がる一方、業務への定着や人材活用などの課題に直面」--。企業のデータ活用について、こんな調査結果をNTTデータ経営研究所が発表した。データ活用人材の専任化・正社員化には否定的な声も強い。2020年5月13日に発表した。
NTTデータ経営研究所が発表した『企業におけるデータ活用の取り組み動向調査』は、データ活用の取り組みに従事する担当者の意識を調べたもの。インターネット調査「NTTコム リサーチ」の会員で10~60代の男女を対象に2019年7月26日から2019年9月3日に実施した。有効回答者数は1471人である。
同調査によれば、データ活用の目的としては、「顧客や市場の調査・分析(回答率16%)」「商品やサービスの検討・改善(同15%)」「経営戦略や事業計画の策定(回答率14%)」が上位に挙がる(図1)。市場拡大や競争優位性の獲得など、いわゆる“攻め”に向けた領域だ。なかでも金融業においては、「顧客や市場の調査・分析」が21%と最も高かった。
一方で製造業と物流・卸売業、金融業では、「業務プロセスの効率化・品質向上」を目的にする割合が、それぞれ15%、14%、16%と高く、「顧客や市場の調査・分析」と肩を並べる。これら業界では、社内の業務プロセスの見直しにおいてもデータ活用への取り組みが進む。
こうした目的から、データ活用に用いられているデータの種類としては「顧客データ」が21%で最も多い(図2)。金融、建設・不動産、その他サービスの各業界は全体平均以上に顧客データを利用している。
次いで「財務・経理データ」が全体では14%と多い。だが製造業においては、研究開発や品質記録といった「製品データ」が18%と最も多くなり、顧客データの13%を上回る
企業のデータ活用の取り組みを主幹するのは、経営企画や事業企画、営業企画などの「企画系部門」が全体では28%、次いで総務などの「管理系部門」が同23%で続く(図3)。顧客データが分析の主要データであるものの営業や顧客サポートなどの「顧客応対系部門」は同8%と低い。
データ活用のための手法としては、「Excel等の表計算ソフト」が全体で25%と最も高い(図4)。一方で、機械学習やBI(Business Intelligence)ツールなどの利用が低調な中で、多変量解析など「高度な統計分析手法を活用」するという回答が9%とやや高い。
業種別では、「高度な統計分析を活用」と「機械学習等」を利用する割合が他業種より利用率が高くなる。情報通信業においてはPythonやRといったAI(人工知能)や統計処理用の「プログラミング言語」の利用率が16%と突出して高い。同業界は、携帯電話サービスの利用状況や解約回避などで早くからビッグデータの分析に取り組んできたためだろう。
現場に定着せず人材不足が顕著、だが専門家雇用も難しい
これらの結果を見れば、全体的にデータ活用への期待は高いものの順調に進展しているとは言い難い。では、どんな課題を抱えているのだろうか。
調査では、「戦略・計画・管理」「業務プロセス」「人材・スキル」「システム・データ」「企業文化」の5カテゴリー38項目を挙げて複数回答で聞いている。結果、データ活用の目的別や業種別で大きな傾向差は見られず、「データ活用が単発の取り組みになってしまい、業務として定着しない」や「自社にビジネス面のスキルが不足」と「自社にデータサイエンススキルが不足」が30%を超えた(図5)。
そうした課題に対する対応策も41項目を挙げて調査しているが、半数前後が「実施しているが効果は不明」としている(図6)。各施策について「効果あり」と「効果なし」とする評価は、ほぼ同数で、若干「効果なし」とする声が強い。
ただ、人材不足を補う施策としての「データ活用人材の正社員採用を行う」と「データ活用担当者を専任化する」については、前者が38.4%と突出して高く、後者も33.2%と高い。
最近は、データサイエンティストやAI関連技術者などを高給で採用する動きがニュースになったりしているが、今回の調査結果をみれば、彼らをどう活用するかにおいて新たな課題も浮上しかねない。
また活用するデータに対しても「データの取得範囲を広げ、データ量を増やす」という策を「効果なし」とする回答が30.8%ある。
今回の調査結果を見る限りでは、日本企業のデータ活用に向けた取り組みは、期待は高い、あるいは経営層からのかけ声で取り組みが始まってはいるものの、現場では逆に何らかの掛け違いが発生し、取り組みの加速よりも、むしろ先細りしかねない印象すらある。